たとえばパソコンのストレージ(データの保存スペース)が満杯になったら、あなたはどうするでしょう。ストレージの大きい機種に買い替えたり、ストレージを交換したりすることはできますが、いちばん手っ取り早いのは「不要なデータを削除する」ことです。

 それと同じように、人間の器も中身を捨てれば容量が増えます。いっそのこと全部捨てて空っぽにしてしまえば、誰でも「器の大きいリーダー」になれるでしょう。

器の小さなリーダーの共通点は
こだわりと自負心の強さ

 では、捨てるべき「中身」とは何か。それは、自分の「こだわり」です

 太宗の言行録を読むと、「その身を修めるには、必ずその習ふところを慎む」という言葉があります。「慎む」とは、謙虚になるということ。謙虚になるためには、つまらない自尊心を捨てて、自分という器を空っぽにしなければいけません

 自分の好き嫌い、これまで築いてきた仕事観、人生観、見栄や欲望などの「こだわり」を捨て、頭の中を「無」にすることで、リーダーは自分という器を大きくできます。

 すると、「自分はいつも正しい」「部下は自分の思いどおりに動かせる」などといった偏見や尊大さも消えてなくなるにちがいありません。

 その空いたスペースには、新しい考え方や物の見方などがどんどん入ってきます。「おれは仕事ができる」という自負心の強いリーダーほど、「部下に任せるより自分でやったほうが早い」と考えがちですが、謙虚になれば権限を積極的に部下に与えるようにもなるでしょう。

 もちろん、部下からのダメ出しも素直に聞くことができます。

 しかし残念ながら、そうやって自分を空っぽにできるリーダーは滅多にいません。むしろ、出世すればするほど謙虚さを失い、態度が尊大になっていく人のほうが多いでしょう。いわゆる「上から目線」にならずにいられるリーダーは少ないものです。

 そうなってしまうのは、「上司と部下」という関係を「人間としての上下関係」と履き違えてしまうからだと思います。仕事の業績が認められて社内で出世すると、自分はほかの人間より「えらい」と思いたくなるのが人間です。

 でも、上司や部下というポジションは、組織を回すための単なる機能のひとつにすぎません。自動車にエンジン、車体、車輪、ハンドルなどがあるのと同じように、組織に属する人間もそれぞれ違った役割があるというだけのこと。