AIは「書き言葉」人間は
「語りかけ」で言語を習得する
しかし、私たちは、この結論には賛成できません。生成AIと人間言語では、習得するために使うデータの質が決定的に違うからです。生成AIの出力の「見た目」は人間言語と変わらなく見えるかもしれませんが、それを生みだすメカニズムはまったく別ものであることを忘れてはいけません。
第一に、生成AIが学習に使っているものは、主に書き言葉(≒インターネット上のテキストデータ)です。「でも、現在の生成AIは音声で反応してくれるではないか」という反論が聞こえてきそうですが、あれは生成された文章を読みあげているに過ぎません。現状では、学習に使われているデータは、あくまで「書き言葉」がメインです。
人間と生成AIは学習方法がまったく異なるのです。新聞や小説、ましてやインターネットを読んで言語を習得する赤ちゃんはいません。しかも、人間の赤ちゃんは前述のような穴埋め問題を通して言語を学ぶわけでもありません。人間の赤ちゃんは、周囲の大人たちからの「音声的な語りかけ」を通して言語を学ぶのです。この語りかけこそが、単なる情報ではなく、「育ちの原動力」となっています。
養育者は赤ちゃんに対して、独特の話し方をすることが知られています。この話し方は、英語ではchild-directed speechと呼ばれます(日本語では「子ども向け発話」とでも訳せるでしょうか)。この話し方にはいくつか特徴的な傾向があります。
音声に関する特徴
(1)声が高い
(2)話す速度がゆっくり
(3)ポーズ(間)が長い
(4)イントネーションが強調されている
単語に関する特徴
(5)難しい単語を使わない
(6)オノマトペが多い(もぐもぐ、ちゃぷちゃぷ、など)
(7)繰り返し言葉が多い(まぜまぜ【混ぜる】、めんめん【麺】、にゅうにゅう【牛乳】など)
文に関する特徴
(8)文が短め
(9)問いかけが多い
(10)子どもの言ったことを繰り返すことが多い
その他
(11)表情が豊か
(12)感情がこもっている
(13)発話と同時に触覚への刺激を与えてあげることが多い
(14)子どもの反応に即して、発言を促す
この独特の話し方は、普通の話し方に比べて、赤ちゃんの注意を引きやすいことが実験で示されています。また、この話し方が母語の獲得に役立つことを示した研究は数多くあります。







