
2025年、生成AIの次の大波が企業に到達している。ある程度のタスクを自律的に判断して人が指示を細かく与えることなく進めることができるAIエージェントだ。さらに10年以内にこうしたAIエージェントを複数使役するシステム「エージェント型AI」が登場し、企業や産業の在り方を一から変える可能性も出てきた。だがこの世界で生き残れない企業や中間管理職、社員も出てきそうだ。業績や株価、全ての働くビジネスパーソンの未来を大きく左右するエージェントAIに、経営者はどう対応すべきか?特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#1では、専門家にエージェントAI世界の展望を聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
人間の代わりに全ての業務をAIが代行?
2028年までにエージェントAIと人が協働する世界に
仕事の全てをAIが行う会社――こんな未来の会社を仮想体験できるワークショップを、PwCコンサルティングが顧客向けに始めている。
所定のアカウントでログインすると、顧客は仮想空間上の「新しい会社」のオフィスに入ることができる。受付に行くと案内係が社内に案内してくれて、AIで一連の仕事を行うことができる。自社製品のSNS上での口コミを基に、ターゲットとする顧客ペルソナを設定。商品企画書を基に商品開発を行い、資材の購買や工場の生産管理や納品までもこなす。さらに、その顧客層にヒットするマーケティングの企画を立てて実行。広告出稿やDM、チラシの配布を行う――など、いわば、企業でのAI活用の最終形に近い未来像が体験できるのだ。
これらは実際の技術ですでにできるようになっているものも多いが、AIを使った業務が中心になった会社を想定して、自社でのAI活用の検討につなげるためにPwCが始めたものだ。すでに数十件の問い合わせを受けているという。
2022年末にChatGPTが登場して約3年。最初は恐る恐るの利用だった企業側も、事業の中核で次々とAIを使い始めている。初期段階では、人間の入力に対して定型文を返すだけだった生成AIは日々進化している。そして25年に急速に普及が進んでいるのが、依頼された作業をある程度自律的に進め、人間が細かな指示を出さずとも推論を繰り返して目的を達成することができる「AIエージェント」だ。
上図のPwCのシミュレーションでも多くのAIエージェントが使われている。また、多くの企業でさまざまな分野において導入が進み、各ITベンダーがこぞって関連サービスを打ち出すなど、23年にブームとなったChatGPTに続く新たなバズワードとなりつつある。
そして、AIエージェントのさらなる進化形が、これまで人がこなしてきた高度な意思決定までも代替する力を持った「エージェント型AI」だ。ガートナーでは「28年までに日本企業の60%でこうしたエージェント型AIと共にビジネスを行うことが当たり前となる」としている。
企業と業界、そしてそこで働くあまねく人に大きな影響を与えるエージェントAI。だが、全ての企業と人がその恩恵を受けられるわけではなく、逆に淘汰される者も出てきそうだ。
これまでは「効率化」の面が強調されがちだった生成AIブームだが、次の大きな波のエージェントAIは人間ではできなかった新たな業務を担わせることもでき、企業の抜本的な変革そのものを担う可能性も秘める。今経営者がエージェントAIに対してどのような対応をするかで、近い将来の業績や株価にも大きく影響してくることは必至だ。勝ち残るための条件は何か?次ページからじっくり見ていこう。