「父が亡くなった、とりあえず税務署に」→相続がさらに面倒になる“致命的なミス”とは?
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。
Photo: Adobe Stock
相続がさらに面倒になる“致命的なミス”とは?
本日は「相続のNG行動」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。
「思いついた窓口からまわる」は絶対NG!
相続手続が大変になる一番の原因は、「とりあえず思いついた窓口から回る」ことです。税務署、法務局、銀行、保険会社……やることが多いのは確かですが、順番を間違えると二度手間や手戻りが増えて、時間もストレスも膨らみます。スムーズに進めるコツは、対外窓口に行く前に、相続手続を大きく3段階に分けて考えることです。
相続手続は3段階に分けて考える
第1段階は、財産の棚卸し(リサーチ)です。亡くなった方がどんな財産を残していたかを洗い出すフェーズで、預貯金、証券、生命保険、不動産などを1つずつ確認していきます。ここが曖昧なままだと、次の「どう分けるか」の話ができないので、まずは全体像をつかむことが最優先になります。銀行口座については、いわゆる凍結の話も含めて「残高証明書を取る」「取引履歴を取る」といった作業がこの段階で必要になってきます。
第2段階は、分け方を決める段階です。棚卸しが終わったら、相続人全員で話し合い、誰が何を相続するかを決めます。ここで分け方が固まらないと、金融機関や法務局での名義変更は基本的に進められません。「名義変更を先にやってしまおう」と焦ると、分け方が決まっていないために手続きが止まったり、やり直しになったりしやすいので注意が必要です。
第3段階が、名義変更などの実行です。分け方が決まったら、その内容を分割協議書に落とし、書類を整えたうえで、金融機関や法務局で名義変更を進めます。相続手続はここでようやく「各窓口で手続きが進む状態」になります。特に銀行は、1回で済むことはあまりなく、棚卸しのために残高証明書や履歴を取りに行く段階と、分け方が決まった後に名義変更・払戻しをする段階で、基本的に2回は動くことになる、という前提で組んでおくと現実的です。
専門家に頼む場合は?
効率化したい場合の選択肢として、司法書士に依頼する方法もあります。費用はかかりますが、いわゆる遺産整理のサービスとして、戸籍の収集から各機関での手続まで一通りまとめて進めてくれるところがあります。どこに銀行口座があるか、どこの生命保険に加入していたか、借金がないか、といった探索まで含めて対応してくれるオプションがある場合もあります。税務署がこうした探索を代わりにやってくれるわけではないので、時間と労力を減らしたい人にとっては有力な手段になります。
相続手続は、窓口の数が多いぶん「順番」が大事です。棚卸しをして、分け方を決めて、書類を作って、名義変更へ。3段階に分けて動くだけで、無駄な往復とストレスはかなり減ります。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







