「私は消耗してます」と打ち明けるだけで、人は癒される

 心理的リソースが共通言語になると、職場における日常会話にも変化が生まれます。
「今、難しいお客さんの対応に追われていて消耗気味だから、その仕事、ちょっと待っててくれるかな」
「これは心理的リソースの消耗が大きいタスクだから、最初は一緒にやろう」
「この施策はサイパが悪いから、優先順位を下げようか」
 このような会話が自然に飛び交うようになり、お互いの心理的リソースに配慮し合ったり、協力し合ったりすることができるようになっていくのです。

 この効果は非常に大きなものがあります。
 これまで多くの組織やチームでは、「疲れている」「ストレスを感じている」と率直に言葉にすることは難しかったはずです。そのような弱音を吐いたら、周囲から「何を甘えているんだ」「そんなことを言ってる場合か!」と思われるのがオチだったからです。

 ところが、「心理的リソースが消耗している」「心理的リソースが枯渇しそうだ」という表現であれば、ぐっと言いやすくなります。「疲れている」と弱音を吐くのではなく、「チームにとって貴重なリソースが減っている」という事実を伝えているだけだからです。

「単に、言葉が置き換わっただけじゃないか?」と思われるかもしれませんが、たったそれだけのことで、メンバーは安心して自分が疲弊・消耗していることを伝えられるようになります。それは、私がこれまでお付き合いしてきたクライアントにおいて、何度も目の当たりにしてきたことです。

 そして不思議なことに、「いま消耗している」と打ち明けるだけで、多くの人は、フッと心が軽くなり、すでに癒されたような感覚を覚えます。さらに、メンバー同士、「俺も実は……」「私もそうなんだよね……」などと、心を開いてコミュニケーションをすることで、自然とチームワークは生み出されていきます。

 このように、心理的リソースを共通言語にすることで、チームの空気は劇的に変わっていくのです。

(本原稿は『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』を一部抜粋・加筆したものです)

櫻本真理(さくらもと・まり)
株式会社コーチェット 代表取締役
2005年に京都大学教育学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券(株式アナリスト)を経て、2014年にオンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotree、2020年にリーダー向けメンタルヘルスとチームマネジメント力トレーニングを提供する株式会社コーチェットを設立。2022年日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。経営する会社を通じて10万人以上にカウンセリング・コーチング・トレーニングを提供し、270社以上のチームづくりに携わってきた。エグゼクティブコーチ、システムコーチ(ORSCC)。自身の経営経験から生まれる視点と、カウンセリング/コーチング両面でのアプローチが強み。