チームの雰囲気がどんよりとしているとき、メンバーたちが「疲れた」「実は、このことで消耗してるんだよね」などと本音を口にできることはとても大切なことです。そのような本音を仲間に聞いてもらえるだけでも心が軽くなりますし、お互いに「疲れる理由」「消耗している理由」を共有することによって、その原因を取り除くことができるかもしれません。「疲れた」と言えることは、とても価値のあることなのです。しかし、多くの組織ではそんな弱音を吐くのが難しいのが現実。みんなが本音を隠しながら仕事をしているのです。では、どうすればみんなが安心して弱音を吐けるようになるのか? この記事では、新刊『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』(櫻本真理・著)から抜粋しながら、そのとっておきの方法についてご紹介します。
Photo: Adobe Stock 写真はイメージです
心理的リソースという「概念」をチームで共有すべき理由
「心理的リソース」(「面倒くさいけど、やるか!」という心のエネルギー)という言葉をチームの共通言語にする――。これは、チームを活性化するうえできわめて重要なことです。
なぜなら、メンバー全員が心理的リソースを意識するようになることで、お互いにリソースを消耗させないように配慮し合うようになったり、チーム全体の心理的リソースを高めていく取り組みを進めることができるようになったりするからです。
ただ、チーム状況があまりよくないときに、いきなり定例会議の場で、リーダーが心理的リソースという言葉をもち出しても、おそらくほとんどのメンバーは共感してはくれないでしょう。
だから、まずは、リーダーが自分自身を見つめ直し、メンバーの心理的リソースを大切にする関わり方を徹底することで、一人ひとりのメンバーとの信頼関係をつくっていくことが大切です。その信頼関係があるからこそ、リーダーが口にした心理的リソースという言葉を、メンバーはまともに受け取ろうとしてくれるのです。
では、その条件が整ったうえで、リーダーはどのように心理的リソースを共通言語にしていけばいいのでしょうか? あるチームの事例を見ながら、一緒に考えていきましょう。
主人公は、大手メーカーの研究開発部門のリーダーである雨宮さんです。
雨宮さんは、チーム状況の悪化を懸念して、私のところに相談にこられました。
それから約半年間。メンバーとの向き合い方を改めるとともに、何がメンバーの心理的リソースを消耗しているのかを把握したうえで、それを解消する手立てをコツコツと積み重ねてきました。
そして、メンバーとの信頼関係がある程度醸成できたことを受け、いよいよ心理的リソースという概念をみんなに伝えようと思いました。そこで、私は共通言語化するための「3つのステップ」を伝授し、雨宮さんは、定例会議の場でそれを実践されたのです。その様子をダイジェストでお伝えします。
チームでお互いの「消耗」を語り合う
【ステップ1】心理的リソースの概念を共有する
まずは、心理的リソースの概念についてメンバーに共有します。
雨宮さんは、月次の定例会議の場で、こうメンバーに伝えました。
「みんなに知っておいてほしい『心理的リソース』という考え方があります。これは、人の『心のエネルギー』を、お金や工数のように、チームが成果を出すために欠かせない資源として捉える考え方です。
心理的リソースは、誰にとっても有限で、無限に湧いて出てくるわけではありません。それを無駄遣いすれば、人は疲弊してしまうし、チームとしての成果が出なくなってしまいます。
そこで、みんなの心理的リソースをどんなことに使っているのか、どんなことで消耗しているのか、聞かせて欲しいと思っています。増えたり減ったりする理由は、本人の努力だけではなくて、チームが何かを変えなくてはいけないサインでもあります。
だから、どんな理由で消耗していても、それは責められることじゃない。共有すべき大切な情報として取り扱います」
【ステップ2】チームで心理的リソースの消耗について対話をする
続けて「最近、どんなことに心理的リソースを使ってる?」とメンバーに聞きます。
ホワイトボードやワークシートに書き出してもいいでしょう。
雨宮さんは、メンバーが意見を出しやすくするために、ひとつの事例として、雨宮さん自身が消耗していることを伝えました。
「今は、年間の目標設定に心理的リソースを使ってるかな」
「あと、採用も進めなきゃというのも気になっているけど、なかなか取り掛かれていない」
「実は家族がいま体調を崩しているので、それにも心理的リソースを奪われている」
このように、自分の「消耗原因」について率直に伝えたのです。
すると、次第にメンバーからも意見が出始めます。
「問い合わせ対応が増えていることで消耗している」
「商品数が増えたためにオペレーションが複雑になってきていて、判断に困ることが増えてきた」
「説明もなく経営方針が変わることにすごく消耗している」
こうして、みんなが思い思いに、日頃負担に思っている「消耗」を口にし始めると、「あ、それ私も思っていた」「そうそう、そうなんだよ」などと、同調する人が出てきて、自然と場は盛り上がっていきます。そして、みんなが分け隔てなく、意見を言いやすい空気が醸成されていくのです。
【ステップ3】アクションを決めて、実践する
現状がどうなっているかを把握したら、次はアクションを決めます。
「今日出たテーマのなかで、どれが大事だろうね」「何をするとこの消耗を止められるだろう」とみんなで話し合うことで、チームにとっての優先順位を明確にしていきます。
そして、雨宮さんのチームでは、「人材採用については自分が動き始めます」とあるメンバーが言ってくれたり、雨宮さんが「商品ごとのオペレーション統合は私のほうでなんとかするよ」と提案するなど、それぞれの役割分担も決まっていきました。
こうして、具体的なアクションを決めたら、それをみんなで実行して、再び次の会議で振り返るようにします。
言うまでもありませんが、このプロセスは、一度きりで完結させるのではなく、何度も繰り返しPDCAを回すことによって、チーム状況を継続的に改善していくことが重要です。そして、そのプロセスを通して、心理的リソースという考え方がメンバーに定着していくのです。



