「そもそも、水筒は帰ってからすぐ流しに出すように言っているんです。でもいつも出さなくて。出さない時は水筒の用意をしなくていい、と言っているんですが、妻はいつも息子の鞄から出して、用意してしまうんです。私はそれもやり過ぎだと思っています」

「だって、熱中症とか、脱水とか心配じゃない」

「学校には水道があるだろう」

「だって、浩二は水道水嫌いだから」

 明彦さんはコロナ禍からのテレワークで、子育てには積極的に関わるようにしているそうですが、それ以前はあまり関わっていなかった事もあり、夫婦の子育て観が一致していない様子です。

「私は心配なんです。息子が自分の事が何も出来ない大人になってしまうんじゃないかって。あるじゃないですか。引きこもりになってしまうとか」

「そんな極端な事には……」

 加奈子さんが言うと、「分からないだろう」と明彦さんが制します。

「水筒も用意が出来てないと、『ママが悪いんだ!』って騒いで、妻を叩く事もあるんです。その時は私が止めに入りますけど」

妻が育てられた
放任主義の家庭環境

「お父さんが入るとおさまりますか?」

 はい、と明彦さんは言った後、

「ただ、私の言う事を聞くかというとそうでもなく、『やりなさい』と言った事もやりません。私も仕事があるのでずっと見ている訳にもいきませんし。妻にも子どもにもあまり口うるさく言いたくはないんです。夫婦で言い争っているのも子どもに見せたくありませんし」

 夫婦喧嘩の目撃も心理的虐待とされる時代ですから、明彦さんの心がけは立派と言えます。

 ただ、夫婦の子育て観を一致させる必要があります。

「お父さんとお母さんの言う事が違うと子どもは混乱しますし、それにどうしたって自分にとって都合の良い方をとってしまいますからね」

 私が言うと、明彦さんは、

「その通りです。今既にそうなっていますからね。それから、中学受験を考えているんです。だから、自分の事は自分でやる、という意識を持ってもらわないと」