世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

【世界的大ブーム】世界の美食家たちが惚れ込む「薪料理」っていったい何?Photo: Adobe Stock

「薪料理」(まきりょうり)っていったい何?

 一本の薪から生まれる火だけを頼りに、温度や香り、調理の流れを組み立てていく…。そんな原始的ともいえる調理法「薪料理」が、今、改めて注目されています。

 薪には、炭とは異なる魅力があります。
 炭は特定の木を高温で焼き上げたもので、安定した火力が特徴ですが、産地や職人の技術に依存します。一方、薪は地元の山の木を割り、干して使うことができます。その土地で手に入る素材を燃やし、料理に使える点で、地域の風土がそのまま料理に宿るのです。

 また、薪は火力の調整がしやすく、強火から弱火まで自在に操ることができます。火から立ち上る蒸気や、木の種類ごとに異なる香りも、食材に奥行きを与えてくれます。
 桜や楢などを使えば、ほのかな薫香が素材を包み込み、味わいに深みをもたらします。

スペイン「エチェバリ」が火付け役。日本でも味わえる

 世界的な薪料理ブームの火付け役は、スペイン・バスク地方の名店「エチェバリ」と言われています。
 薪で焼いた肉や魚が評判となり、世界中のフーディーに薪料理が注目されるようになりました。
 日本でもその影響を受け、特に自然豊かな地方では地元の薪を使った料理が地産地消と結びつき、新たな食文化を生み出しています。

 ただし東京をはじめとする大都市では、火災予防条例に基づく指導からガスと同じように薪を使うことが難しく、排煙設備やダクトの設置に特別な工夫が必要なので、高層ビル内の飲食店では導入が難しいことが多いです。

 こういった理由から薪料理はローカルガストロノミーと非常に相性がよく、日本の薪料理は、古民家や自然に囲まれた地方が中心となって盛り上がっているのです。

 土地の木を燃やし、その火で地元の食材を調理する。火、木、食材がすべてその土地に根ざしているため、唯一無二の一皿が生まれます。薪料理は単なる調理法にとどまらず、地域の自然や歴史、文化との深い対話なのです。

 拙著『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか?』では、そんな薪料理の魅力を十二分に味わえる、地方の名店もいくつかご紹介しています。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。