世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

なぜ、地元の人も知らない名店に世界の富裕層が集まるのか? 一般人には見えない「富裕層の情報源」とは?Photo: Adobe Stock

クローズドなコミュニティの存在

 僻地へ行ったり、最先端のレストランへ足を運んだりしている富裕層たち。そんな彼らは、最新の情報をどのようにして手に入れているのでしょうか。

 普通は食べログを見たり、SNSやネット情報をチェックしたりしますよね。しかし、富裕層は違います。彼らは、世間一般の評価に頼ることはありません。

 影響力のある人ほど、むしろ静かに、身近な人へだけ伝えるというスタイルを貫いています。彼らは独自のクローズドなコミュニティを構築しており、その中で情報をこっそりやりとりしているのです。それは、非公開なSNSグループかもしれませんし、密室での会話かもしれません。

 つまり、誰にでも開かれたものではなく、「あなたになら教えてもいい」という信頼が成立した関係性の中でのみ伝達されるものです。

 そのため、蚊帳の外にいた一般的な人々からすると、「地方の名もなき店に、突然外国の富裕層がやってきた」という現象が起こります。しかし、これは決して唐突な出来事ではなく、彼らの世界ではすでに知られていた情報なのです。

 こうして、一部のトップフーディーたちの間でやりとりされた情報は、その後、次第にマスへと広がっていきます。しかし、その頃にはもう彼らの関心は次の「まだ知らない価値」へと向かっているのです。

 ちなみに、こうしたコミュニティは、仕事のつながりで構築されることもありますし、プライベートの関わりを通して出来上がることもあります。富裕層コミュニティではありませんが、私自身、東日本大震災のときに「外食産業を勝手に救済しよう!」というサイトを作ったことによって、食にアンテナを張っている人たちとコミュニティを築いた経験があります。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。