2軍時代のイチロー選手は、マシン相手に数時間の打撃練習をしていたが、普通の選手に同じことをやれと言っても、それだけの時間、集中してスイングすることはできない。それがなぜ彼には可能なのかといえば、私はこの「目標設定の仕方」にあるのではないかという気がする。
イチロー選手には自分にとっての明確な目標があり、その日にクリアしなければならない課題がある。その手応えをしっかりと自分で掴むまで、時間には関係なくやり続けるという練習のスタイルなのだ。
イチロー選手が高校時代に
誰よりもやった練習とは
私が彼の基盤として考えるもう1つの要素は、継続する力、つまりルーティンをいかに大切にしているかということである。
ある時、イチロー選手にこんな質問をしたことがあった。「いままでに、これだけはやったな、と言える練習はある?」。彼の答えはこうだった。
「僕は高校生活の3年間、1日にたった10分ですが、寝る前に必ず素振りをしました。その10分の素振りを1年365日、3年間続けました。これが誰よりもやった練習です」
私は現在、少年野球チームの監督を務めているが、それと比して考えてみると、彼の資質がいかに特異なものであるかがよく分かる。
例えば野球の上手な子にアドバイスをすると何をやってもすぐできるようになる。下手な子はなかなか思うようにいかない。ところが、できるようになったうまい子が、いつの間にかその練習をやめてしまうのに対し、下手な子は粘り強くそれを続け、いつかはできるようになる。そして継続することの大切さを知っている彼らは、できるようになった後もなお練習を続けるため、結局は前者よりも力をつけることが多いのである。
その点、イチロー選手は卓越したセンスを持ちながらも、野球の下手な子と同じようなメンタリティーを持ち、ひたすら継続を重ねる。私はこれこそが、彼の最大の力になっている源ではないかと思う。







