例えば愛知県名古屋市の試行では、対象園が全体の約1割にとどまりました。東京や大阪といった大都市圏でも実施状況は区市町村によってばらつきがあります。なので、まず「どの園が対象か」だけでなく、「そもそも自治体がどのくらい積極的か」といった地域性を押さえておくことが重要です。

 特に転勤や引っ越しを予定する家庭では、園選びと同じくらい、「地域選び」が制度の使い勝手を左右するポイントになります。

月に10時間は短すぎて使いにくい?

 月10時間と聞くと、「短すぎて使いにくい」と感じる方も少なくありません。しかし、育児の現実を振り返ると、数時間だけ預けられることで助かる場面は多くあります。

 病院や美容院に行く時間や、上の子の行事に参加する日。家庭の用事を落ち着いて済ませたいときや、親が気持ちを整えるために少し休息を取りたいときもあるでしょう。

 誰通は、こうした“ちょっと助けてほしい”瞬間に力を発揮します。名古屋市の試行では、園への問い合わせが想定を大きく上回り、ニーズの高さが確認されました。短時間だからこそ、初めて保育園に触れる家庭にとっての心理的ハードルを下げる役割も担っています。

 制度の本質は、利用時間の長さよりも「必要なときに頼れる場所がある」ことで得られる安心感にあります。

あえて“正規入園”も有力な選択肢

 誰通を利用する家庭の中には、「10時間では足りない」「もっと自由に預けられたら」という声もあります。そんな家庭に知ってほしいのが、あえて正規入園を選択する方法です。

 正規入園には、次のような利点があります。まず、選べる園の幅が大幅に広がります。認可保育園、認定こども園、小規模保育など、自治体内の多くの園が選択肢となるため、家庭に合った園を見つけやすくなります。一方で、誰通の対象園は自治体が指定するごく一部に限られます。

 また、保育料は世帯の住民税額によって決まるため、家庭によっては誰通の利用料と同程度、あるいはそれ以下におさまる場合もあります。

 さらに、正規入園しても毎日通う義務はありません。家庭の状況に合わせて、週に数回だけ利用したり、必要な日だけ通わせたりと、柔軟に使うことができます。「枠を確保しておく安心感」が手に入るという点でも、検討する価値のある選択肢です。