少年院で「怒りの下げ方」を勉強していたら少女の“怒り80%”になったワケ【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第6話「暴力防止プログラム」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

少年院で「怒りを抑える方法」を学ぶ

 少年院では再非行防止や出院後の自立に向けて、さまざまな指導プログラムが用意されています。具体的には個々の問題行動(非行)に対する指導、進路指導、生活指導、就労指導などが行われています。

 このうち、個々の問題行動(非行)に対する指導としては、被害者の視点を取り入れた教育、薬物非行防止指導、性非行防止指導、暴力防止指導、家族関係指導、交友関係指導などがあります。

 今回のマンガに登場する門倉恭子(仮名)は、妊娠8カ月で少年院に入院し、出産のため医療少年院に転院。そこで無事に女児を出産しました。出産後は数カ月間、医療少年院内で子どもを養育し、その後、子どもを近隣に住む母親に預けたうえで、恭子は元の少年院に戻ってきました。

 恭子は暴力行為によって教師に重症を負わせたことで少年院に入りました。そこで、更生に向けた指導として、暴力防止プログラムを受けることになります。

 一般的に暴力に至るプロセスは、『きっかけ』⇒『思考』(価値観や固定観念)⇒『感情』(怒りなど)⇒『身体的反応』(暴力)という流れで進みます。

 例えば、道を歩いているとき、前から来た人とすれ違いざまに肩がぶつかったとします。あなたはとっさに謝りましたが相手は何も言わずに立ち去ろうとしました。これが『きっかけ』です。

 それに対して、あなたは「こっちが謝ったのだから、相手も謝るべきだ。馬鹿にしているのか!」と考えるとします。これが『思考』です。

 次に相手が謝らずに立ち去ろうとするなど、あなたの思い通りに相手が行動してくれないことから「馬鹿にされた」といった受け止めから“怒り”の『感情』が生じます。さらに、あなたの身体が直ぐに反応してしまい、たまたま持っていた傘で相手を叩いたりすると、そこで“暴力”という『身体的反応』につながります。

 もちろん、『思考』と『感情』の過程をぶっ飛ばして『きっかけ』からいきなり『身体的反応』につながるような粗暴な非行少年もいますが、どちらかというとそれは動物的な反応で、犬の頭を叩くといきなり噛みつかれる状況と似ています。

『きっかけ』との遭遇は誰しもが避けられません。しかし、そこで例えば「わざとでないかも?」と考える(思考する)ことで“怒り”につながることを防ぐことができますし、“怒り”につながっても深呼吸をするなどして身体的反応を防ぐこともできます。特に『思考』を変えることができると大きな効果が期待できます。

 さて、マンガでは『違った考えをしようシート』という教材を用いて、『思考』を変えるワークに取り組んでいきます。このワークを通して恭子は、自分の起こした暴力事件について「(中学の先生は)ひょっとして自分のことを考えて注意してくれたのかもしれない」と考え直し始めることになるのです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社