岡部たかし演じる父親の「投資したかったワケ」が想定外!朝ドラ史に刻まれる爆笑コント誕生〈ばけばけ第98回〉

小豆相場のゆくえ

「平気平気。これぐらいなら俺、食べられるよ」と丈がパクリ。
「おいしい」

 そこへトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が「焦げ臭い」と心配してきた。

「トーストの黒」を食べていると聞いて、「トーストの黒」とは何かと戸惑うトキ。家事の事情を知らない世間知らずな奥さんっぽさを振りまきながら、主題歌へ――。

 主題歌明けは司之介(岡部たかし)のターン。ここがこの回の真骨頂である。

 司之介はそわそわと喫茶店で荒金(夙川アトム)を待っていた。

「前のあれが今日もあれして」と言い訳しながらやって来た荒金。

 小豆相場に関して「安心せえ。わしは熊本のいきなり団子といういきなり団子ば、しきっとう男ばい」

 何を言ってるのかわからない。何かごまかしているのかも。劇伴は不穏。

「じつは例の小豆(あずき)相場ばってん」

 これはいやな予感すぎる。ところが、

 どん!

 荒金はなんだか重たそうな包みを出した。

「言いよったとおりとんでもなく跳ね上がったばい」

 おーよかったー と思ったら、

「違う!」

 激怒する司之介。

「思ってたのと違う!」
「増えたらいけんのじゃ」

 えええ?

「大借金を抱えてどん底に落ちる。そして昔、長屋におったときのような、ひりひりとした尻に火がついた張り合いのある暮らしを送ろうと思ってお主に託したというのに」

「お主の怪しさを信じて」

 荒金以上にわけのわからないことを言い、司之介は「借金させちょくれ。わしの尻に火をつけちょくれ」とすがる。

「めちゃくちゃばい」と荒金は戸惑うばかり。

 いやあ、笑った。笑った。「あのあの」回に次いで笑わせていただいた。くだらなすぎて最高なコント回。朝ドラは『あまちゃん』(2011年前期)以来、おもしろい朝ドラを模索してきたと筆者は感じているが、どうにも中途半端だった。でも試行錯誤の成果がついに花開いた。そう思う。ちゃんと一定レベルの喜劇を朝ドラで放送できるようになったのだ(感涙)。

 そしてその題材が、“困ったお父さん”であることも、極めて朝ドラらしい。

 これまでの朝ドラで、借金して嫌われる男性(主としてお父さん)は何人も出てきた。でもみんな好きでそうなったのではなく、どうしようもない事情で堕落していったのだ。ところが司之介は、自ら地獄に戻りたいと言う。それがいいとか悪いとか好みだとか好みじゃないとかはさておいて、朝ドラが一步前進した瞬間である。そういう人もいるのだという人間のスケッチを1枚増やした瞬間である。

 個人的には、岡部たかしと夙川アトムの飄々(ひょうひょう)とした芝居がふじきみつ彦の脚本にどハマりしていて、ゲラゲラ笑ってしまった。その一方で、世の中、なりたくないのに貧しくなっている人たちが増えている時代に、バブル時代でもないのに、こういう笑いはいかがなものかと思う人もいるだろうと想像した。

 ただ、司之介は、裕福になってすることがなくなった人なのだ。こういう人もいて、こんなお金の無駄遣いをしてしまう人が世界にはいるのだ。憎らしいけれど、岡部たかしが演じると、なんだか憎めない。