「なにも起きない日常」を描く朝ドラがすごい…中身がない15分を作るって実は高度な技術?〈ばけばけ第97回〉『ばけばけ』第97回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第97回(2026年2月17日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

クマ、トキを徹底的に監視する

 トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)の寝顔のどアップからはじまる。

 クマ(夏目透羽)が、鞠(まり)つきもさせてくれない。

「万が一のことがあったらいけません」というのだ。万が一とはどんなことか。たかが鞠つきで「万が一のこと」とは。

 そんなやりとりが交わされたのは昨日のことだった。

 トキは朝、目覚めると、そっと庭に出る。

 まだ皆が寝静まっているうちに鞠つきをしようと、そっと鞠を取り出す。

 ふふふ、ふふふと不気味に笑い、「あんたがたーー」とやろうとすると、背後に気配を感じる。ふりかえると、
クマがいた。

 トキの態度も不気味だが、クマも不気味。

 クマは鞠を奪い取ると、「見とってください」と自分でやりはじめる。

 主人には危ない目に遭わせられないので、見るだけで満足してもらおうとしているわけだ。

 ところが、トキは叫ぶ。

「見とっていうならうまいことやってよーー」

 クマはあまりにも下手くそだった。

 ひじょうにほのぼのしたはじまり。「何もない日常」を描くと制作者が宣言していたように、ほんとに中身がない。でもこれは決して悪いことではないと思う。日常とは、いつもとくにキレッキレなおもしろいことがあるわけではない。他者に話すほどのことでもない出来事を、あえてドラマで描くことは実は高度なのかもしれない。

 主題歌明け。

 クマは「あんたがた、どこさ」を歌いながら、アイロンをかけている。

 この歌は「あんたがた、どこさ(どこから来た?)」と聞かれて「肥後(熊本)」と答え、肥後のどこさとさらに質問される歌詞。熊本編にふさわしい歌である。