ぼうどろ事件からほんとの泥棒事件に?
トキも暇すぎて寝転がって、鼻をかみ、それを寝転がったままゴミ箱に入れようとしている。彼女もまた暇過ぎるのである。こういう朝ドラヒロインも新鮮だ。
そのゴミ箱のなかに、ヘブンの落書きを発見する。
「学がないけん わからんのだけど」と前置きをはじめるトキ。
これは文学? と正木(日高由起刀)に聞くが、文学ではない。
さらに、ヘブンは、パラパラ漫画を書いていた。これも文学ではない。
文学でないが、絵や漫画の才能があるのだから、うらやましい。でもヘブンは苦しんでいる。
早朝、司之介は居間の金庫にお金を戻しているのを正木に見られる。
「盗んでるんじゃない、増やしちょるんだ」と言い訳し、泥棒の逆の「ぼうどろ」じゃと言い出す。
正木は「ぼうどろ」とは古来からある言葉なのか、と真面目に問う。
そこへフミ(池脇千鶴)が起きてくる。
「なんですかねこげな大金」と訊かれ、家族と居候が全員集まる。
司之介は「すまん」と謝る。
お金を増やして謝っているシュールな状況。荒金とのやりとりだけで終わらず、お金を増やしてしまったエピソードがまだ続いているのが、笑いのプロのワザである。
そこへクマが来て、パンの焼き網がないと報告する。
にわかに幕を開ける、焼き網泥棒事件。
不穏な劇伴の流れるなか、「焼き網を盗んだものはこのなかにおる(いる)」。
司之介と正木がほぼ同じポーズで同じ言葉を繰り返す。
朝ドラ後半戦、物語の本題を描き終えたとき、ふいにミステリードラマ調になるのは、『ブキウギ』(2023年度後期)でもあった。ここからひりひりしたドラマのはじまりか?
『ブキウギ』にも参加していた制作統括・橋爪國臣チーフプロデューサーは司之介たちのゆとりがあって物足りないエピソードについてこのように語っている。
「熊本編では、やることのない退屈さみたいなものは1回出したいなと思いました。庭の草むしりや、鞠(まり)つきもさせてもらえないエピソードなどもそのひとつです。人間、満たされて全てがうまくいっているのに、あれ? と思うことはありますよね。そういう退屈さと、退屈さに反する何かを求めるエピソードを作りたいという話はプロットづくりのときからありました。
ちなみに、司之介の参考にしている稲垣金十郎さんは、実際に草むしり担当だったそうです。
そのなかで、小豆相場の話は我々の提案ではなく、ふじきみつ彦さんが自主的に書いてきたと思います。あのエピソードがおもしろいのは、ふじきさんと以前から一緒に芝居をしている夙川アトムさんが相場士・荒金役を演じていることです。ふじきさんが書いたものを、ふじきさんの世界を熟知しているアトムさんと岡部さんが演じているから、とてもおもしろいものになりました」









