課長として成果を挙げていたのに、部長に昇進してみると、なぜか仕事がうまく回らなくなってしまった…という人は実は少なくない。多くの企業幹部候補生を指導してきたグロービス経営大学院から見た、「部長」として高いパフォーマンスを挙げられる人が担っている役割とは? 累計180万部超の書籍「グロービスMBA」シリーズに新たに加わった、部長職以上を目指す人のための『グロービスMBA エグゼクティブ・マネジメント入門』より一部をダイジェストでご紹介する。

グロービス エグゼクティブPhoto: iStock/maroke(写真はイメージです)

 エグゼクティブの入り口である部長が行うべき仕事には、どのようなものがあるだろうか。

・部署の仕事(役割)の定義:どこまで自分が責任を負うかを明確にし、他部署との境界をクリアにする。
・部下のアサインメント(職務の設計と定義、業務配分):誰にどのような業務を割り振るかを決める。
・目標の設定と結果の必達:部署としての目標を設定し、特に数値目標を達成する。
・部下の支援・指導と、それによる動機づけ・人材育成:部下を指導することでモチベーションを高め、スキル向上を促す。
・効果的で高い成果を挙げるチームの構築:生産的なチームを形成する。
・他部署や外部との関係構築:社内外の組織と連携し、部署の代表としての役割を果たす。

 部長は経営層の入り口であると同時に、現場の最上位に立つ存在でもある。すなわち、企業における「経営と現場の交差点」に立ち、上位層に対しても現場に対してもレバレッジを利かせることが求められる。上記の仕事を一段高い次元で実現することこそ、部長の本来的な役割といえる。

 では、一段高い次元で部長が果たすべき役割とは、端的にいえばどのようなものなのだろうか。ここで代表的な6つの役割を挙げよう。

◯リーダーとして組織を動かす
 部長には、課長に比べて「管理者」としての役割以上に、リーダーとして組織を動かす力が求められる。すなわち、部のマネジメントを行いながら、強いリーダーシップを発揮し、部全体を目標に向けて導くのである。
マネジメントとは、経営資源を適切に活用して業務を遂行し、そのための体制を整えることである。特に、配下の人材のスキルを高め、動機づけを行い、正しい方向に導くことが含まれる。これに対してリーダーシップとは、ビジョンを明確に示し、個々の能力を最大限に引き出すために影響力を行使し、人々を鼓舞して組織全体を新しい方向へ導くことである。

◯人を動かして結果を残す
 部長は、課長を部下として用いながら成果を残すことが求められる。課長時代にも係長やチームリーダーといった部下がいたかもしれないが、課長は従来の部下以上に能力が高い存在である。そのため、部長にはエンパワメントを基盤としたマネジメントが必要となる。言い換えれば、課長をテコとして活用できるからこそ、リーダーシップの発揮や、後述する戦略家としての仕事に、エネルギーを割くことができるのである。
 ただし、それには難しさも伴う。特に個性的な課長が多い場合、部内の一体感が欠けたり、働き方の不均衡や不平等が生じたりすることがある。かつての年功序列の時代には、部長は課長よりも年長で権限も強く、指示によって部下を動かすことができた。しかし今日では、権限だけで課長を動かせる時代ではない。年上の部下や、かつては上司であった人材を率いることも増えている。そのため、スキルや経験、人脈に象徴される関係性の力を駆使して、課長を動かすことが不可欠となる。

◯戦略家としての役割を果たす
 部長になると、戦略家としての役割が格段に増す。まず、長期および短期の部門目標を設定し、それらを達成するための戦略や計画を策定する必要がある。その際、目標は上位の事業部や全社の戦略・目標と整合していなければならない。また、事業部や全社の戦略を策定する段階では、自部署の状況や目標を経営陣に提示し、議論に貢献することも求められる。
 単にトップダウンで与えられた目標に向かってまい進するだけでは不十分であり、能動的に経営陣に働きかけ、会社全体の成長や競争力の向上に寄与することが期待される。これは課長レベルの目標設定と大きく異なる点であり、現場のオペレーション管理以上に経営的視点が強く求められる。
 さらにPDCAを強く意識し、適切なKPI(重要業績評価指標)を設定・監視しながら部下と協働し、目標を確実に達成していく必要がある。部長クラスになると、課ごとに複数のKPIが存在するのが通常である。それらを課長に意識させ、自律的に取り組むよう支援することが求められる。
 リソースの獲得においても、部長はより積極的な役割を担う。課長が既存のリソースをやり繰りするのに対し、部長は、組織内から必要なリソースを調達すべく経営陣に掛け合うだけでなく、外部からの調達も求められる。具体的には、優秀なパートナー企業や個人を発掘し、適切な関係を構築することが含まれる。そのためには、必要なリソースの質や量、期間、品質基準などを部下とともに明確化し、齟齬を防ぐことが重要である。

◯良い組織をつくる
 部長になると、組織開発の責任が一気に増す。組織開発とは、言い換えれば「良い組織づくり」である。その基盤となるのがビジョンであり、組織の目指す方向性と目標を示し、全員が共通の理解を持ち、目標に向かって努力するための指針となる。
 加えて、良好な組織文化、組織風土を築くことも大切だ。特に組織文化の醸成は部長の重要な役割であり、ポジティブな文化を育むことで、コンプライアンスを遵守しつつ、働きがいが感じられ、チームワークが促進される環境をつくり出す必要がある。
 さらに、戦略に応じて最適な組織構造を整えること、部下のリーダーシップを育成すること、円滑なコミュニケーションを奨励すること、相互信頼を高めること、心理的安全性を担保することなども求められる。部長は常に、部署全体が働きやすく高いアウトプットを出せる職場づくりに取り組まなければならない。

◯部の代表として調整・交渉する
 部長は、部の代表として調整や交渉を行い、組織図上のより高い次元のレベルでシナジーを創出する役割を担う。また、スポークスパーソンとして部内の課題を社内で共有し、必要な支援を積極的に求めることも必要だ。
 組織の垣根が低くなる中で、パートナー企業などとの関係を円滑に維持する責任も負う。多くの場合、カウンターパートは課長時代よりも上位の層となる。たとえば、課長時代の相手が取引先の課長であったとすれば、部長になればその相手は部長や、場合によっては社長に代わる。ここで求められるのは、オペレーション遂行のための短期的な最適化ではなく、長期的視点に立ったWin-Winの関係構築である。

◯経営陣との信頼関係を構築する
 部長は、経営陣との信頼関係を築くことも求められる。上司である事業部長や役員の指示をただ受け入れるだけでは不十分であり、時には彼らにとって耳の痛い指摘や、新しい提案を行う必要がある。ただし、それが独善的であってはならず、経営環境や上司の状況を適切に汲み取ったうえで、会社の成長や健全性に資する提言を行うことが重要である。
 このような姿勢は、経営陣に「よく考えている部長だ」という印象を与え、将来的に部長以上のマネジメントトラックへ進むためのカギにもなる。もっとも発言するだけでは不十分であり、しっかり結果を残すことが欠かせない。特に経営陣と合意した目標を確実に達成し続けることは必須である。ホワイトカラー比率の高い組織では、期待を大きく超える成果を残すことが、経営陣から一目置かれるきっかけにもなる。

◯その他の細かいタスクも怠らない
 部長が関与する業務には、これまで述べた主要な役割以外にも、細かいタスクが存在する。たとえば以下のようなものだ。

・メールの確認と返信
・出席すべき会議の確認と発言
・報告書の承認や助言
・予算の管理
・緊急対応や事故対応
・採用面接
・コンプライアンス遵守の確認
・DX(デジタルトランスフォーメーション)など全社プロジェクトへの関与

 これらの業務は一見すると細かいものばかりだが、けっして後回しにしたり、ぞんざいに扱ったりしてはならない。正確かつ迅速に対応することを心がけつつ、先に示した6つの主要な仕事を適切に実行できれば、部長として高いパフォーマンスを発揮できるはずである。