この間、ゆうこには彼氏ができた。その男に金を渡していたのだ。

 僕は「子どものお風呂やごはんはどうするつもりだ。これは虐待だ」と彼女を責めた。すると、泣きながら「理事長は間違っている」とゆうこは反論した。

 その夜、心配したスタッフがゆうこを訪ねてくれ、様子を報告してくれた。

「ゆうこ怒ってますよ。理事長は間違っているって」。

 僕が「いや、虐待だろう」と言うと、そこじゃない、とスタッフは口を開く。

「ゆうこは『怒るなら私ではなく母親を怒ってくれ。私はあの人から何もしてもらっていない』と言っています」。

 実は以前、ゆうこの母親も支援したことがある人で、彼女の言ったことは十分わかる。さらにゆうこはこう続けたそうだ。

「うちがあの人から教えてもらったのは1つだけ。万引の方法だけ」と話し、泣き崩れたという。本当に切ない。

現実から目を背けていては
不幸の連鎖を止められない

 だが「だから仕方ない」では済まない。

 翌日、ゆうこを訪ねた。

「君の言うことはその通りだと思う。君の母さんの問題は大きい。だとしてもこの子はどうなる。もしかするとその子が大きくなったとき、警察のお世話になるかもしれない。

 刑事さんが彼を叱る。それに対して彼は言う。『刑事さん、間違ってる。怒るんだったら俺の母親を怒ってくれ。ガスも出ない部屋で俺は育てられた。万引ぐらいして当然だ』と。

 つらいけど君はこの子のために学ばねばならない。母さんがしてくれなかったことを君がその子にするために。

 抱樸には子育て経験者がたくさんいる。みんなで一緒にやっていこう」

 その後、ゆうこは再婚し今は2人の子どもを育てている。苦労は絶えない。そんなゆうこも30歳を超えた。がんばれ!ゆうこ!

カブトムシを見ると
トラウマが蘇る20歳の女性

「出会い」には責任が伴う。最近は「それはあなたの自己責任」と言い放ち「出会った責任」を回避することが多い。自己責任論の蔓延が社会を無責任にしたように思う。