それは、日本企業においては40歳で課長、50歳で部長。課長の決裁権限だって、せいぜい数十万円。長期雇用が約束された年功序列。いかに努力して成果を出しても、なかなか勝ち上がれません。一方で海外では、年齢に関係なく成果を出せばいつでも昇進・昇給できる仕組みが整っています(その代わり、成果を出せなければクビにもなりますが)。この入社後の昇進・昇給に関するギャップは、世界トップ大生にとって非常に大きいのです。これが、日本の超一流企業に世界のトップ学生が就職したとしても3年~5年以内で辞めてしまう最大の理由のひとつです。それが今の現実なのです。

 これから日本企業が世界の優秀な人材を採用・活用するためには、人事制度をよりグローバル基準に近づけないといけないでしょう。ただし、人事制度全体を一気に変えることは不可能に近いため、若手から導入していくことを、弊社は提唱しています。

起業につながったソニーでの経験

 ここで、私が人材事業を立ち上げる大きなきっかけともなった前職での経験を含め、簡単に自己紹介をしておきます。

 私は、1998年に憧れの会社だったソニーに新卒で入社し、2007年末に退職・起業するまでの約10年間、最高の環境で働かせてもらいました。若いうちから、やりたい放題やらせてもらえたという感覚です。本当に楽しかったし、そこには感謝の気持ちしかありません。しかも、今やソニー・グループは、弊社のメインクライアントのひとつです。巣立っていった社員を応援してくれる、そんな素晴らしい会社です。

 新卒で入社して10年弱、私はグローバルな業務に携わりました。海外経験豊富で優秀な人が多く、若手も自由に意見や反論ができる風土で素晴らしい環境でしたし、とりわけエンジニアの技術レベルは別次元で、能力もノウハウも、こだわりも飛び抜けていました。

 振り返ると、最も充実していて楽しかったのは海外の巨大案件を現地メンバーと獲りに行っている時でした。当たり前のように会議も資料も英語。そんな言語の壁を乗り越え、日本から持ってきたビジネスアイデアを現地のメンバーと一緒にローカル化して売り込んでいく。その一つ一つの作業こそ、自分がグローバル企業で働いていることを肌で感じる瞬間でした。日本人と外国人がひとつのチームになって、ソニーというブランドを築き上げていく。日本人社員と外国人社員の垣根がない会社だと実感しました。ソニーという会社の強さは、その垣根のなさにあったのではないかとつくづく思います。