世界中の天才を日本に集めたい

 起業して世界に通用するグローバルカンパニーを、自分自身の力でゼロから作り上げてみたい。20代中盤からその思いがどんどん強くなり、週末はよく六本木アカデミーヒルズにこもって、子ども向けのA3サイズの落書帳にビジネスプランを書きまくっていました。体育会出身者にありがちですが、私は平日は猛烈に働きながら、かつ毎晩のように社内外の方と遅くまで呑み歩いていました。仕事もやりがいがあって楽しいし、息抜きもしっかりできていました。そんな状況ですから、本気で今の生活を捨てて、大冒険に挑む踏ん切りがなかなかつきませんでした。お恥ずかしいことに、結局私は覚悟を決めるまで、5年近くかかったのです。

 ビジネスモデルのアイデアはいくつかありました。そのなかで、ソニーのときすばらしいと感じた世界中の人材が集まる環境構築に貢献できて、かつ、私が今でも最重要理念としている3要素――1)INNOVATIVE 2)WORLDWIDE 3)WOW!――つまり、革新的な事業モデルで世界中に夢や感動を与えることができる当モデルを選びました。巨大な人材マーケットにおいて、学生の優秀層を世界的にネットワークして企業と繋げる会社が世に存在しなかったので、このモデルであれば世界一を本気で目指せると確信したのです。ファーストリテイリング元副社長で、現在は株式会社リヴァンプの代表、かつ弊社の社外取締役である澤田貴司のような偉大な先輩陣からも多くのアドバイスを頂きました。

 ソニーを退職し、私は5年前に「TOP CAREER」というブランドで、世界高度人材の採用からリテンション(人材の定着)、人事制度まで幅広いサービスを提供する世界高度外国人材事業を立ち上げました。世界高度人材とは、簡単に言えば、グローバルのビジネスシーンで活躍できる優秀人材のことです。

 当初は日本で頑張っている外国人留学生にフォーカスし、企画構想から数ヵ月で、ソニー、三井物産、伊藤忠商事など、日本を代表するグローバル企業十数社と契約ができました。「優秀な人材であれば、国籍問わず積極的に採用したい」という想いは皆一緒だったのです。その後、各国トップクラスの大学に在籍し、専門性や各種能力の高い新卒対象の学生まで、弊社のネットワークを広げてきました。

 海外でもリクルーティングを始めてみて分かったのは、日本企業で働いてみたいという意欲をもつ学生は多くいるということです。日本企業はこの事実にもっと目を向けるべきではないでしょうか。

 以来、約5年にわたって、世界中から優秀な人材を発掘・リクルーティングする採用支援サービスを多くの企業向けに提供しています。ソニー時代は人事系の仕事をしたことも、知識もなかった私ですが、世界中のビジネスマンと関わってきたことは、今の人材事業に大いに繋がっているのです。

 それでは次回以降、世界人材争奪戦における日本企業のポジション、取り組みについてご紹介していきます。(※次回は7月12日公開予定です)