年利5%で運用できたとしても、元本が400万円必要になります。今から追加で400万円を投資するのは大変ですが、固定費の見直しならすぐにでもできます。

 支出を減らすことは、実質的に「資産運用の利回りを上げる」ことと同じ効果があり、しかもリスクはゼロです。

「何歳からいくら使うか」を事前に決め、そこから逆算して「今いくら積み立てるべきか」を決める。そして、固定費を見直して入金力を確保するという地味な作業こそが、もっとも確実な出口戦略なのです。

資産形成のゴールは
最後まで人生を豊かに過ごすこと

 最後に、マインドセットの話をさせてください。

 固定費を削減しろと言いましたが、ただ我慢して生活の質を落とせと言っているわけではありません。

 幕末の志士、高杉晋作の言葉に「面白きこともなき世を面白く」があります。環境がつまらないのではない、自分の心が楽しんでいないだけだという意味です。

 例えば、毎回カフェに行って散財するのではなく、お気に入りのマグカップと少し良い茶菓子を買って自宅で楽しむ。これなら支出は減りますが、満足度はむしろ上がるかもしれません。

「お金を使わなければ楽しめない」という価値観から脱却できれば、老後の不安は驚くほど小さくなります。

 お金は大切です。ただ、お金を使わないと満足できない人生は、いくらお金があっても満足できない状態になってしまいます。

 資産形成のゴールは「大金持ちになること」ではなく、「最後まで人生を豊かに過ごすこと」です。

 そのためには、これまで信じてきた「リターン追求」の考え方を、ある段階で切り替えることが必要です。

 取り崩し期に入ったら、高利回りよりも変動リスクの小さい分散投資を選び、暴落の直撃を避けること。そして、いざという時のために生活費の1〜3年分と近い将来の出費を現金で確保しておくこと。

 一見、後ろ向きな姿勢に見えるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、計算された「攻めの姿勢」と言えます。

 必要な取り崩し額から逆算して今の積立額を決め、生活満足度を下げずにコストを下げる工夫をする――。

 この準備ができている人だけが、相場の波に飲まれることなく、自分の人生を生きることができるのです。

 まずは、ご自身の通帳を開いてみてください。

「昨年の1月1日」と「今年の1月1日」の残高を見比べれば、その差額と年収からあなたの「本当の年間生活費」が見えてきます。

 まだ若いから関係ないではなく、資産を積み上げる今だからこそ、終わりを意識してみてください。