良かれと思っていたのに
部下を追い込んでいた口癖とは

 食い下がった石山さんに、部下はポツリとこう漏らしました。

「石山さんは"念のため"が多すぎるのです」

「こういう方針でレポートをまとめたいと思います」
「いいと思います。念のために○○の視点も入れておいてください」

「この調査内容でいいでしょうか」
「OKです。念のために○○の情報も調べておいてください」

「会議の資料はこの内容でいいでしょうか」
「いいですね。念のために○○のデータも用意しておいてください」

 たしかに思い当たることは多々あります。全て良い仕事のため、クライアントのため、部下の成長のためを思ってのことだったのですが……。

 ただ、石山さんの思いとは裏腹に、部下たちの心の中は、「そこまでやる必要があるの?」という疑念でいっぱいでした。しかも、仕事は任せると言いながら、実態は「念のため」という有無を言わせぬ指示が飛んでくるのです。

 部下たちは誰もがやるべき仕事をたくさん抱えています。にもかかわらず、石山さんの「念のため」で、いつまでも1つの仕事を完了させられない。他の仕事が少しずつ先送りになり、ストレスが溜まっていく。ほとんどの場合が、「やっていてよかった」ではなく、「やったが意味なかった」となることへの徒労感……。

 このような感情とともに、部下たちは静かに疲弊していたのでした。

管理職の役割は「部分最適化」
ではなく「組織最適化」

 程度の差こそあれ、石山さんのような上司はどこの職場にもいます。仕事に詳しく、よく気がつく人ほど、条件反射のように「念のため」を連発しがちです。

 しかし、本人にはそれが問題だという自覚がありません。なぜならば、その部分だけを切り取れば、少しでも良い仕事をするための正論だからです。

 管理職の役割は、与えられたリソース(メンバー、時間、予算など)で、チームの成果の最大化を図ることです。そこへ向けて、費用対効果、優先順位づけ、注力点の明確化など、チームの生産性という視点を持つことが必要なのです。