AIの脅威、米商業用不動産業界にも試練Photo:Smith Collection/gettyimages

 米国で商業用不動産を手掛ける企業は厳しい戦いを強いられている。店舗や倉庫、オフィスを売却するには人手が必要であることを投資家に納得させるための戦いだ。

 今、業界の将来が疑問にさらされている。投資家の間では、人工知能(AI)が不動産仲介業界の収益性の高いアドバイザリー手数料やコミッションを侵食し、鑑定などニッチなビジネスが事実上消滅するのではないかとの不安が広がっている。

 多くの投資家はすでに不動産株を投げ売りしている。世界最大の商業用不動産サービス会社であるCBREグループは、昨年10-12月期(第4四半期)の売上高や利益が過去最高に達し、2026年についても予想を上回る見通しを発表したにもかかわらず、発表当日に株価が8.8%下落した。決算発表があった週にも、発表日までに12%近く値を下げていた。

 JLL、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド、ニューマーク・グループなど同業他社の株価も急落し、同セクターの時価総額は数百億ドル失われた。

 業界幹部らはこうした動きに素早く反応し、AIは自分たちの会社に利益をもたらすと主張している。彼らは調査やバックオフィスのコストを削減する可能性があるとする一方で、データセンターの開発、管理、リースなど、AIによって需要が高まり、新規ビジネスを獲得できる分野があると説明している。

 経営陣はまた、市場が破壊されるリスクは小さいと考えており、ほとんどの不動産取引は、市場に関する知識や長年の関係に基づいた複雑な交渉が必要で、テクノロジーでは実現できないと主張している。

 不動産株はここにきて、下げの一部を取り戻している。それでも、数多くのAIスタートアップ企業が不動産市場に参入していることも、関係者の懸念をあおっている。

 商業用不動産の資本配分に役立つAIシステムを設計するスタートアップ企業アパースAIの共同創設者であるフランシス・ホアン氏は、「脅威になるのは、これまで2週間かかっていた作業を2時間でこなすことができる、AIを使いこなす28歳のブローカーだ」と語る。

 投資家は不動産業界でもAIによって労働集約的なビジネスモデルが空洞化し、専門知識を高い価格で提供する企業のマージンが圧縮されないかどうか見極めようとしている。

 しかし、商業用不動産サービス企業にとって最大の脅威は、ボットが仲介業者に取って代わることではなく、「オフィスを利用する経済」がAIによって知らず知らずのうちに間に縮小していくことだ。

 より少ない従業員で同じ仕事ができるようになれば、必要な机、フロア、リースが減少する可能性があり、業界最大の手数料源の1つが侵食されることになる。オフィスを対象とする主な不動産投資信託(REIT)は全て価格が下落している。SLグリーン・リアルティの株価は年初来で15%以上下落している。