撮影タイムで日本人に
オーロラが見えなかったワケ

 1時間ほどバスに乗り、到着したのは道路灯すらない、真っ暗闇の草原だった。上空は厚い雲に覆われており、一番星を見つけることすら難しい。

 ツアーの添乗員さんから「ここでオーロラが出るのを待ちます」と案内があった。

 外気温3℃の屋外で、ワクワクブルブルしながら運命の時を待ったが……。1時間後、添乗員さんから「この場所はダメみたいね。違う場所に移動しましょう」とアナウンスがあった。私は肩を落としながら、30名ほどのツアー客と一緒に、再びバスの中へ……。

 30分ほど移動した後、降ろされた草原の上空には、すべてのツアー客が「Wow!」「Fantastic!」と声が出てしまうほど美しい、満天の星空が広がっていた。

 天の川というより、もはや宇宙。生きていて良かったとさえ思える、圧巻の光景だった。

「あ、流れ星!」

 私の口から思わず日本語が飛び出た。すると近くにいたツアー客から「日本人ですか?」と声をかけられた。その人は女性で、なんでも一人旅の最中らしい。相手の顔すら見えない暗闇の中、私たちは旅の一期一会を楽しんだ。

「みなさん見てください! あそこにオーロラが出てます!!」

 添乗員さんが大声で叫んだ。鼻息荒く、私たちは東西南北すべての方向に視線を向けた……が、オーロラらしきものはどこにも見当たらない。

佐藤「え、オーロラ、どこですか?」
女性「ない、ですよね?」

 周囲からはパシャパシャと、スマホカメラで撮影する音が聞こえてくる。私たちはオロオロしながら周囲を見渡し続けた。

女性「もしかして、あれ、ですかね?」
佐藤「え、どれですか?」
女性「あれです、あれ。横線になってる、ほら、あの白い“雲”みたいなやつ……」