◆記憶を引きずる人と切り替えられる人の「決定的な違い」
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)

【精神科医が教える】なぜ寝る前に「嫌な記憶」を思い出すの? 絶対に「してはいけない」ことPhoto: Adobe Stock

過去の辛い記憶が突然蘇る理由

過去の辛い出来事や、深く後悔している記憶が、突然頭に浮かんできて離れなくなる経験は、多くの人が持っているものです。今を懸命に生きようと努力していても、不意に昔の失敗や恥ずかしい記憶(いわゆる黒歴史など)が蘇り、強く反省してしまうことがあります。

なぜ、なんでもない時に急に過去の記憶が浮かんでくるのでしょうか? 精神医学の分野には、トラウマ(心的外傷)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)といった概念があります。元々これらは、命の危機に関わるような非常にシビアな出来事(戦争など)が脳に刻み込まれ、あたかも今そこにあるかのようにフラッシュバックして蘇る症状を指していました。

しかし最近では「複雑性PTSD」などと呼ばれるように、そこまで深刻な危機ではなくとも、日常的な嫌な思い出や人間関係の摩擦が脳に深く刻み込まれ、ふとした瞬間に浮かび上がってくる現象も、広くトラウマの一種として扱われるようになっています。強烈な嫌な記憶が脳に残り、不意に思い出すのは、人間の脳の仕組みとして誰にでも起こり得ることなのです。

記憶が浮かぶこと自体は防げない

過去の嫌な記憶がランダムに頭に浮かぶこと自体を完全に防ぐのは、非常に困難です。過去は変えられないと頭では分かっていても、どうしても心から離れないのは自然なことと言えます。

ここで最も重要なのは、記憶が浮かばないように無理にコントロールしようとするのではなく、「浮かんだ後にどう対処するか」に焦点を当てることです。

重要なのは「記憶をたどらない」こと

記憶が浮かんだ後の対処として避けるべきなのは、その記憶を「深追い」してしまうことです。ふと嫌な出来事を思い出した時に、「あんな恥ずかしいことがあった」「どうしてあんなことをしてしまったのだろう」と、当時のストーリーを順を追ってたどってしまうと、感情が連鎖し、ますます心に定着してしまいます。

過去の記憶は、追いかけなければ自然と消えていくものです。パッと頭に嫌なことが浮かんだら、「また嫌な記憶が出てきたな」と認識するにとどめ、そこで思考を打ち切ることが何よりも大切です。

具体的な対処法:
別のポジティブな思考に置き換える

では、記憶をたどらないためには具体的にどうすればよいのでしょうか? 有効なのは、全く関係のない別のこと、特に「ポジティブなこと」へと思考を切り替える方法です。

目をつぶってぼーっとして思考をリセットするのも一つの手ですが、嫌な記憶が自然に消えるのをただ待つのは少ししんどい作業です。そのため、別の思考で置き換えてしまうのがおすすめです。

例えば、寝る前に過去の嫌な記憶が浮かんできたら、「明日は新しいお店で美味しいものを食べる予定だ」といった近い未来の楽しみを考えたり、「家族で行った旅行がとても楽しかったな」といった過去の幸せな情景を詳細に思い出したりしてみてください。

ネガティブな記憶をたぐり寄せる代わりに、別の楽しい思考を意図的にたぐり寄せるのです。

繰り返し練習することで対処できるようになる

ほんの少しでもネガティブな記憶をたぐり寄せてしまうと、次から次へと嫌な連想が続いてしまいます。

最初は、浮かんだ記憶をブロックして別のことに切り替えるのは難しいかもしれません。しかし、「記憶をたどらない」「違うことを思い出す」というプロセスを意識して何度も繰り返すことで、人は次第に上手に対処できるようになっていきます。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。