結論から言ってしまえば、この作品はターゲティングが非常に明確である。 VTuber、ボカロ、ネットゲームなどを愛するオタク層にターゲットを絞り込んでいる。言い換えればオタク以外の層に媚びるところがあまりない。

 話題になっているからといって、これらのネットカルチャーに親和性を持たない大人が見に行って、楽しめるかどうかは未知数である。『君の名は。』(2016年)や『サマーウォーズ』(2009年)と同じような感覚で見に行くと、少々危険かもしれない。

 ただ、オリジナルコンテンツ制作で優位に立つNetflixが、おそらくアジア向け戦略として、この作品を打ち出してきたことが興味深い。コンテンツ過多であり、それぞれの界隈においてバズるものが異なる令和において、最大公約数を狙うのではなく、ターゲット層を絞り込むことがランキング上位を狙う一つの解になった可能性がある。これはセグメントによる熱量最大化型のコンテンツである。以下、作品の内容に触れる。

バッドエンドの古典を下敷きに
「絶対ハッピーエンドにする!」

 物語の舞台は今より少しだけ未来の日本。東京の進学校に通う酒寄彩葉(以下、いろは)は、諸事情あって一人暮らしをしながら、バイトで学費を稼ぐ苦労人である。ただ、塾に通わずとも東大進学を目指せるほどの天才でもある。

 エナジードリンクを飲み、睡眠時間を削ってバイト、勉強、推し活、ゲームのすべてをこなすいろははある日、アパート前の電柱の中で眠っている赤ん坊を見つける。仕方なく家に連れ帰ると、この赤ん坊はあっという間に少女に育ち、いろはは「かぐや」という名前をつける。

 底抜けに明るいかぐやの性格に押し切られる形でふたりは同居をはじめ、ときにはバーチャル空間「ツクヨミ」で一緒に遊ぶ。「ツクヨミ」の管理人・月見ヤチヨは、いろはの推しなのである。

 タイトルやあらすじからもわかる通り、「竹取物語」を下敷きにした作品である。作品内で、いろはがかぐやにiPadで「竹取物語」の絵本を見せ、知ってるかを聞く場面もある。

 竹取物語のラストを知ったかぐやは、バッドエンドであることを悲しみ、自分の物語は絶対にハッピーエンドにすると宣言するのである。このハッピーエンド宣言(「決めた! 絶対ハッピーエンドにする! 」)がストーリーの核となって展開していく。