ジークアクスは外部のカラーならではの企画、当初は大人しかったのが加速がついて止まらなくなった【鶴巻監督に聞く・上】Photo by Masato Kato (c)創通・サンライズ

ガンダムシリーズの最新作である『GQuuuuuuX』(ジークアクス)。エヴァンゲリオンシリーズのスタジオカラーが、1979年テレビ公開のシリーズ1作目である『機動戦士ガンダム』をふんだんにオマージュしたパラレルワールド設定で制作した。先行して公開された劇場版とアニメ放映は大好評を博し、大きな話題を呼ぶとともに社会現象ともなった。テレビ放映を終えて、監督の鶴巻和哉氏に改めて制作意図を振り返ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

シン・エヴァ制作中に始まった共同企画
ガンダム宇宙世紀オタクが集結して作り上げた

――『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(ガンダムジークアクス、以降ジークアクス)は、2025年1月の先行映画上映で話題を呼び、3月のアニメシリーズ放映開始からは40~50代のビジネスマンが平日深夜ながらもリアルタイムで視聴し、その後SNS等でずっとその話題で盛り上がるという社会現象を生みました。改めて、45年という歴史を持つIP(知的財産)であるガンダムを、エヴァンゲリオンシリーズのスタジオカラーが制作するという最初のきっかけは何だったのか教えてください。

 企画が動き始めたのは18年ごろで、サンライズスタジオ(バンダイナムコフィルムワークス サンライズスタジオ、以降サンライズ)のプロデューサーである小形尚弘さん(本作ではエグゼクティブ・プロデューサー)が、うちの杉谷勇樹プロデューサー(同主・プロデューサー)に話を持ちかけたのが最初のきっかけでした。

 杉谷君がカラーに入社したときは、制作中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』*1の制作がちょうど止まっているタイミングでした。そこで、いったんサンライズに出向するような形で、『機動戦士ガンダムUC』*2の最終回などの制作を手伝っていて、そこで小形さんともお付き合いを得るようになりました。小形さんから杉谷君に「エヴァが終わったら次はカラーでガンダムを作ることを考えてもらえませんか」という打診があり、それを受けて、杉谷君から僕に企画書を出してもらいたい、という依頼がありました。

 大変責任重大で荷が重いな、というのが第一印象でしたが、杉谷君はエヴァンゲリオンで制作デスクという、現場スケジュール管理の責任者という大変な仕事を成し遂げていて、その苦労に報いたいという気持ちもあり、企画書を出すことになりました。

――鶴巻さんご自身はガンダムシリーズはずっとお好きでいらしたんですね。

 ガンダムは巨大なコンテンツですし、20代から60代までの男性のうちでガンダムが好きな人は本当にたくさんいますよね。

 僕自身は例えばオルタナティブ*3の『(機動戦士ガンダム)SEED』 とか『(機動戦士ガンダム)00』なども含めて全部詳しいというわけではないのですが、少なくとも宇宙世紀*4のエピソードに関しては、まあ好きで、いわゆる宇宙世紀オタクではあるんですよ。小社社長の庵野秀明は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』*5の同人誌の責任編集をやったりしているくらいですし。シリーズ構成・脚本の榎戸洋司さん筆頭に、みな密度の濃いガンダムオタクが今回作のクリエーティブチームを構成していると言っていいでしょうね。

ジークアクスは外部のカラーならではの企画、当初は大人しかったのが加速がついて止まらなくなった【鶴巻監督に聞く・上】復刻された逆シャア同人誌。初版は1993年に庵野秀明・カラー社長が責任編集したものだった。寄稿陣には富野由悠季監督を始め、豪華メンバーが並ぶ
Photo by Yoko Suzuki

――ジークアクスは「地球連邦軍の新型モビルスーツガンダムをジオン軍のシャア・アズナブルが奪い、赤く塗ってジオンの主力機として使い、その結果ジオンが一年戦争(*6)に勝利した後の世界」という非常に大胆な設定です。1979年テレビ放映の『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)本編の登場人物やモビルスーツが多数登場し、特にファーストガンダムの第1話のシーンが途中までほぼ画面構図やセリフもそのまま再現される中、本編とは真逆のストーリー展開が繰り広げられるという構図(劇場版およびテレビ2話)も大きな話題となりました。このような設定で作品を作った理由とは?

ファーストガンダムの精密なオマージュが二次創作のようだと評価されることも多いジークアクス。当初の企画は実は少し様相が異なるものだったという。庵野氏の作品への関わり方や、現在の形になったいきさつを、鶴巻監督が語ってくれた。