プロの料理家に教わった
グリーンサラダの極意
ようやく自らに太鼓判を押せるようになったのには、わけがある。
我が家に、料理家・上田淳子さんが遊びに来ることになった。本国で修業をしたフランス料理のプロで、数人の集まりのなか希望の料理を作ってくれるという。そんな夢みたいなことは二度とないと、何日も前からリクエストを考え、頭の中が沸騰した。
考えに考えた結果が、グリーンサラダだった。はたして、その日から私のサラダは、自分史上最高の味に、さま変わりしたのである。
ほかの人たちは春巻きだ、だし巻き卵だと、グループラインで希望を出していた。私は、サラダのおいしくなさを克服する、またとないチャンスと考えた。誰にも言ったことのないそのコンプレックスを、ライン上でおそるおそる告白する。
〈料理家さんが作るグリーンサラダを食べてみたいです。なにをどうやってもうまくいかない。自分のサラダをおいしいと思ったことがない。なにかコツがあるだろうから、作るときから、そばで見せてもらえませんか〉
お安い御用とのことで、サラダ菜を持参した彼女が、我が家で全工程を披露してくれた。修業時代、毎日作らされたという。
「コツはね、親指でこうやってちぎること。親指の腹は、ちょうど口に入る食べやすい大きさなの。こうすると、それだけでふわふわっとエアリーになるんだよ」
洗って水を切ったサラダ菜一枚一枚に親指をあて、丁寧にひと口サイズにちぎる。あとはうちにある、いつもの塩と胡椒と酢とオリーブオイルのドレッシングを混ぜ合わせるだけ。
おいしいグリーンサラダは
「下ごしらえ」が大事
プロとの違いは、ちぎり方だったのかと、目から鱗が落ちる思いだった。どんな高級なオリーブオイルやおいしい塩を使っているかと思いきや、下ごしらえに極意がひそんでいたとは。
私はいつも、サラダ菜やレタスを何枚かわしづかみにし、適当にちぎっていた。面倒なときは包丁でザクザク切ることもある。
ひと口大にすると、ドレッシングがまんべんなくなじみ、本当にふわっと口当たりがいい。こいつがおいしさの秘密を握っていたのかと、我が無骨な親指をまじまじと眺める。
半世紀以上生きてきたけれど、シンプルなグリーンサラダをおいしく作るコツは誰も教えてくれなかったし、どこにも載っていなかったように思う。ドレッシングの配合やおいしい野菜の選び方は載っていても。







