デザインが生み出される前段階=「枠組み」の構築や、竣工後に続いていく日々に彩りを添えることに関して、自分はアプローチしなくていいのだろうか?そういったソフトウエア側のデザインと両輪となることによって、自分が思い描く一つ一つの「場」の実現は近づくのではないか?
いくつもの問いが生まれ、
自分を振り返る機会を与えてくれる
本書の言葉を借りるならば、「目的の実現のために、あるべきコトを構想し、ビジネスモデルに具現化し、そこにふさわしいモノを生みだす」という考え方で、既存の不動産事業や設計・デザイン事業、そして運営事業を、一連のストーリーの上にレイアウトし直しているのが、我々の言うところの「場の発明」のプロセスである。
「コトづくりのなかにモノづくりを埋め込む」という言葉に出会ったことで、ハードウェア・ソフトウェアのデザインの位置付けが自分の中で明確になった。
いま何かのアクションを起こしている人にとっては、その活動内容や自分のマネジメント方法を俯瞰する良い視座を本書は与えてくれると思う。たとえば、「ロングナウ」の視点に立って射程の広い「大目的」を掲げているだろうか?
それは共感・共有されやすい「目的」としてデザインされているだろうか?また、その「目的」の達成のために適切な「手段」を生み出し、コモングッドに立脚した「コンシャス・キャピタリズム」に繋がるアクションになり得ているだろうか?
そして、「大目的」が様々なステークホルダーの専門性やコミュニティを超える「バウンダリー・オブジェクト(境界線を越える存在)」となり、目的を通じた組織マネジメントができているだろうか?
これらの問いを通じて、自身のアクションを振り返る良い機会を与えてくれるはずである。この体験は、一冊の本がひとりのコーチになるような感覚に近いかもしれない。
五里霧中で先が見えないとしても、五里の霧を超えた地平を目指して歩みを進めることはできる。これが「閉塞感」の時代における生存戦略であり、その道中に必要不可欠な思想が目的工学なのだと感じている。
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『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』
アインシュタインも語った――「手段はすべてそろっているが、目的は混乱している、というのが現代の特徴のようだ」
利益や売上げのことばかり考えているリーダー、自分の会社のことしか考えていないリーダーは、ブラック企業の経営者と変わらない。英『エコノミスト』誌では、2013年のビジネス・トレンド・ベスト10の一つに「利益から目的(“From Profit to Purpose”)の時代である」というメッセージを掲げている。会社の究極の目的とは何か?――本書では、この単純で深遠な問いを「目的工学」をキーワードに掘り下げる。
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多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。
著書に『ビジネスのためのデザイン思考』(東洋経済新報社)、『知識デザイン企業』(日本経済新聞出版社)など、また野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著に『知力経営』(日本経済新聞社、フィナンシャルタイムズ+ブーズアレンハミルトン グローバルビジネスブック、ベストビジネスブック大賞)、『知識創造の方法論』『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社)、『知識経営のすすめ』(ちくま新書)、『美徳の経営』(NTT出版)がある。
目的工学研究所(Purpose Engineering Laboratory)
経営やビジネスにおける「目的」の再発見、「目的に基づく経営」(management on purpose)、「目的(群)の経営」(management of purposes)について、オープンに考えるバーチャルな非営利研究機関。
Facebookページ:https://www.facebook.com/PurposeEngineering