映画ビジネスを理解しているクルーズは、自分が俳優としてギャラを吊り上げることは先々の映画製作に対してマイナスの影響しかないことを90年代初頭には理解していた。

ギャラを高騰させる代わりに
クルーズは歩合契約を選んだ

 ビジネスとしての映画産業は、ざっくり分けて著作印税、手数料、使用料で成り立つ。行使されるメディアは、劇場公開、パッケージ販売、テレビ放映、配信である。消費者は、これらのメディアのどれかを通して使用料を払い、その使用料(売上)からそれぞれのメディアが手数料を引いて、製作者に印税を戻す、という流れである。

 その戻ってきた印税を誰がどのようにどれだけ受け取るかは、製作に関わっている当事者同士で交渉が行われ、製作時に契約として決められるのだが、当然のことながらこの部分での収入は、その映画がヒットしたか否かで大きく変動する。

 つまり、製作者として製作費を負担する人物(クルーズ作品の場合は主にスタジオ)は常に製作費を回収できないかもしれないリスクを背負って作品を製作することになり、製作費をなるべく抑えたいと考えるわけである。

 映画においての著作権者は、製作者であり、出演者は著作権者には当たらない。よって、ほとんどの場合俳優に支払われるギャラは、出演を交渉する際に決められ、一括払いで終わる。

 大スター主演の作品はヒットの可能性が上がるため、そのスターへのギャラがどんどん高額になっていくわけだが、クルーズはそのギャラを高騰させる代わりに、最初に貰う額を抑えて、興行収入が入ってきた所から所定のパーセンテージを受け取る方法を選ぶ。映画製作を邪魔せず、自分の取り分はきちんと増やしていくやり方である。

 この方法は、クルーズが始めたわけではなく、それまでにも行われてきたやり方だったが、基本的には製作資金が集まりにくい独立系の作品や、俳優がどうしても作りたいペットプロジェクト(しかも題材が難しいもの)の場合が多く、またよっぽどのヒットが確実視される作品でない限り、入らないリスクのあるバックエンド(作品の収入からの分配)の収入より、確約された出演料を高額にする方法を選ぶものである。