
さまざまな意味で記念碑的な作品となったGundam GquuuuuuX(ジークアクス)。スタジオカラーとバンダイナムコフィルムワークス(BNF)の合作による本作がなぜ生まれたのか。特集『ガンダム・ジークアクスの舞台裏』(全13回予定)の#7では、BNFでのガンダム事業トップがその奇跡のコラボの経緯と裏側を詳しく語ってくれた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
ガンダム史上2位の興行成績の劇場版映画
カラーとの協業で新規顧客層を獲得、休眠層も復活
――バンダイナムコフィルムワークス(BNF)のガンダム事業の責任者として、一連のジークアクスのプロジェクトをご自身で振り返られてどう総括されますか。
皆さんにすごく喜んでいただいて、想定以上のお声を頂きました。(スタジオ)カラーさんと一緒にやらせていただいたことで、これまでガンダムが届かなかった新しい客層も獲得でき、さらにわれわれのメインターゲットの50代以上の休眠層が、再度ガンダムに帰ってきてくれた。定量的な目標も全て最大限に達成しました。視聴率も配信での再生回数も、ガンダムビジネスのメインである商品販売も非常にいい数字を得たまま、最高の形でテレビ最終回を迎えさせていただきました。
テレビ放映に先行して始まった劇場版上映も、ロングラン上映に加えて再上映まで打つことができ、興行収入は現在35億8000万円に達しています。これは歴代のガンダム映画の中では、2024年公開の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の50億円に続く2番目です。ただ、SEEDは単体の劇場版としての扱いなので、テレビシリーズの先行版の扱いの本作がここまでの数字を取ることができたのは、本当にファンの皆さんのおかげだと思っています。
――ジークアクスのプロモーションや訴求に関して、エグゼクティブ・プロデューサーとしてどのようなことを行ったのでしょうか。まず、本編のテレビ公開前の映画公開という施策ですよね。
テレビ放映に先行する劇場版公開は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』もそうですし、ガンダムでも富野由悠季総監督が手掛けた『ガンダム Gのレコンギスタ』という作品を、イベント上映的に劇場にかけた例があります。そういう意味では初めてではないのですが、今回このやり方を取らせていただいたのは幾つか理由がありました。
その理由の中で最も大きなものが、劇場公開をするとテレビ放送に先行して、事前にプロモーションがしっかりと打てるということです。テレビでスポットCMを流したり、屋外広告を打ったり(JR)山手線内に中づり広告を出す、ということができる。興行収入ももちろん大事なのですが、これにより作品の認知をテレビ放送前にしっかり作ることができる、というところを狙っていました。
ただ、ここまで話題が広がり、劇場興行の成績が伸びたのはやはりカラーさんが、テレビ版1話と2話(シャアがガンダムを奪う、1作目のテレビ版『機動戦士ガンダム』のパラレル回)を頭に持ってきて劇場版にする、という提案をしてくださったからこそですね。この設計に関しては、カラーさんがやはりいかに皆さんに驚いてもらうか、いかに皆さんに熱中してもらえるかをすごく考えて、あの構成にしてくださったんだと思います。
――「ガンダムを見に行ったつもりだったのに、ガンダムが始まってびっくりした」というのは劇場版を見た人がみんな話題にしていました。なぜ制作を外部のスタジオカラーと行ったのでしょうか。あらためて、経緯を教えてください。
新作を外部のスタジオカラーが制作するという、ガンダム作品としては異例のプロジェクトとなったジークアクス。46年目の節目となる今年、あえてBNFがそうした大胆な手を打ったのはなぜか。そして、ジークアクスが生まれるまでには実は「もう一つの企画」があったという。また、気になるガンダムの産みの親の富野由悠季総監督は本作をどう見たのかについても小形氏は語ってくれた。