◆相場下落時にパニックを横目に、銘柄の比較でこっそり稼ぐ人の正体
ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!

【ゴールドマン・サックスの元トレーダーが教える】株で勝つ人と大損する人の決定的な違い…プロが狙う「価格の歪み」とは?Photo: Adobe Stock

百花繚乱の投資メソッド

短中期で収益を上げるアイデアはかなり多様です。これまでにも創造性豊かな投資家や研究者が、次々と新しい投資戦略を開発してきました。

書店に行ってみれば、成功した投資家たちが自身のスタイルに基づいた投資手法を述べた本が数多く見つかります。株価チャートを使ったテクニカル分析で株価の動きを見極める本もあれば、企業の財務情報を分析して適正な企業価値を算定し投資に活かすファンダメンタルズ分析の本などもあり、実にさまざまです。

「歪み」を利益に変えるウォール街の実戦スキル

私はゴールドマン・サックスのトレーダーとして比較的短期の取引を中心に行っていましたが、当時はよく「裁定取引(アービトラージ)」と呼ばれる手法を活用していました。これは、同一または関連する金融商品間の一時的な価格差を利用して利益を得る手法です。

例えば、株式と先物の価格差があるとき、割高な商品を売って、割安な商品を買います。そして価格差が解消されたなら、割安で買った商品を売って利益を確定します。

【解説】個人投資家がどのように活かせるのか?

プロの世界で活用されている「裁定取引(アービトラージ)」の考え方を、個人投資家がどのように自身のトレードに活かせるのか。3つの視点から解説します。

1.プロの手法を「個人の武器」に翻訳する

裁定取引と聞くと、「ミリ秒単位の高速通信や莫大な資金を持つ機関投資家だけの特権」と思われるかもしれません。

確かに、株式と先物のわずかな価格差を瞬時に抜くような取引は、個人投資家の環境では困難です。しかし、この「価格の歪み(本来あるべき価格からのズレ)を見つけて利益に変える」という本質的な考え方自体は、私たちの日常的な投資にも大いに応用できます。

2.銘柄間の「相対的な割安感」に注目する

例えば、同じ業界に属し、事業規模や業績が似ている2つの企業(A社とB社)があったとします。業界全体に追い風が吹いているにもかかわらず、A社の株価だけが一時的なネガティブニュースによって過剰に売られ、B社との間に不自然な価格差が開くことがあります。

ここで「A社はB社に比べて明らかに割安だ(歪みが発生している)」と見抜くことができれば、A社を買うチャンスとなります。その後、市場が冷静さを取り戻し、両者の価格差が妥当な水準に収束したタイミングで利益を確定させるのです。これは「ペアトレード」などの基礎となる考え方です。

3.相場の「方向」ではなく「比較」で勝負する

多くの個人投資家は、「明日、市場全体が上がるか下がるか」という方向性の予測にエネルギーを費やしがちです。しかし、プロが裁定取引の根底に置いているのは、「どちらが相対的に有利か」という客観的な比較の視点です。

この視点を取り入れることで、相場全体の暴落時でもパニックに巻き込まれず、冷静に「連れ安で不当に売られすぎている銘柄」を探すことができます。プロの高度な手法も、その中核にある「論理」を抽出すれば、個人投資家がリスクを抑えながら着実にリターンを狙うための強力な思考法へと変わるのです。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。