ホテルや飲食店などが
狙われる恐れも

 今回の惨劇を招いた端緒が米国やイスラエルにあり、トランプ大統領による一連の行動が明確な国際法違反として厳しく非難されるべき事実に疑いの余地はない。しかし、海外展開を行う日本企業にとっては、事の是非とは別に、かつてない緊張下にある現在の中東情勢を冷静に分析し、現実的な危機管理を講じることが不可欠である。

 欧米やアジアを含む世界各地の駐在員に対し、反米・反イスラエル感情に起因するテロのリスクを十分に周知し、最大限の警戒を促さねばならない。
 
 9.11同時多発テロ、その後のアフガニスタン戦争やイラク戦争、イスラム国の台頭など、21世紀初頭はグローバルなテロ問題が世界に脅威を与えてきたが、インターネットやSNSの急速な普及により、アルカイダやイスラム国が掲げる過激思想の影響を受ける形で、欧米諸国では個人による単独的なテロ事件が横行してきた。

 今回の事態でも、イランの関連組織、イラン支持者などが反米、反イスラエル感情を強め、単独的なテロを計画、実行するリスクは決して排除はできない。

 そして、日本企業が最も留意すべきは、テロの標的が必ずしも軍事施設や政府機関といった特定の場所に限定されないという点である。

 テロ実行犯は、警備の厳重な「ハードターゲット」を回避し、より脆弱(ぜいじゃく)で社会的な心理的影響が大きい「ソフトターゲット」を狙う傾向が強い。具体的には、欧米資本やユダヤ系資本が運営するホテル、キリスト教会やシナゴーグなどの宗教施設、さらには米国系のファーストフード店やコーヒーチェーンなどが、反米・反イスラエル感情の出口、あるいは象徴的な攻撃目標として標的になる恐れがある。

 したがって、日本企業が今直ちに実施すべき安全対策は、中東諸国からの駐在員の退避のみならず、各地の米国・イスラエル大使館や領事館といった政府施設、および、それらに関連する文化施設などへの接近を厳に慎むよう注意喚起することである。

 これらの施設周辺では、突発的な抗議デモが暴徒化する危険性に加え、車両爆弾や自爆テロといった過激な攻撃が敢行される可能性も否定できない。企業は刻一刻と変化する情勢を注視し、社員の安全確保に向けた迅速かつ具体的な情報提供を徹底すべきである。

(株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹)