説明が下手な人は「自分だけの前提」で話している
多くの「説明が下手な人」は、自分の頭の中にある「背景」や「経緯」を相手も知っていると思い込み、いきなり結論や詳細を話し始めてしまいます。
これは、相手に地図を渡さずに「じゃあ、3つ目の角を右に曲がって」と道案内をするようなものです。相手は自分が今どこにいるのか、現在地さえわかっていないのに、目的地にたどり着けるはずがありません。
「仕事ができる人」は、このリスクを誰よりも理解しています。だからこそ、本題に入る前の「最初の30秒」に、ある決定的な一言を挟んでいるのです。
「自分だけの前提」で走りだせば、チームは迷走してしまう
前提を共有しないことで起きる悲劇を、具体的なシーンで見てみましょう。あるプロジェクトの進捗確認会議で、リーダーがメンバーに指示を出す場面です。
「はい、じゃあ早速始めます。例の件、B案で進めることにしたので、各自タスクの洗い出しをお願いします。特に、山田さんはクライアントへのヒアリング項目を今日中にリストアップしてください」
リーダーの頭の中では、「先週の議論を経て、コスト面からB案が最適だ」という結論が出ています。しかし、それを聞いていないメンバーの頭の中は大混乱です。
「(え?B案で決定したんだっけ?)」
「(先週はA案も検討するって話で終わっていなかったか?)」
「(そもそも例の件って、どのプロジェクトのことだ?)」
リーダーは「自分だけの前提」で突っ走っていますが、メンバーはスタートラインにさえ立てていません。
その結果、メンバーは納得感がないまま作業を進めることになり、後になって「やっぱりA案のほうがいいのでは?」という蒸し返しが起きたり、的外れなヒアリング項目が上がってきたりするのです。
認知心理学には「共通基盤」という概念があります。会話が成立するためには、話し手と聞き手の間に「お互いが知っていると信じている知識」が不可欠だという理論です。
説明が下手な人は、この「共通基盤」という土台がない不安定な地面の上に、いきなり「指示」という重い柱を建てようとします。当然、その柱はすぐに倒れてしまいます。これが、「話がかみ合わない」「指示が通じない」という現象の正体なのです。







