先行する海外の先進企業、日本企業に“勝ち筋”はあるか

「日本企業はAIを業務効率化や生産性向上に役立つ『便利な道具』としか見ていない。一方、海外の先進企業は、数百億ドル規模の資金を投じて『AIとの共生を前提とした企業』へと変化を遂げている」(亦賀氏)

 なぜこのような差がついてしまったのか。亦賀氏は、日本企業の経営者のマインドセットに問題があると指摘する。

 近年、多くの日本企業が総力を挙げてDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んできた。しかしその実態は、さまざまな業務でSaaSを導入し省力化とコスト削減を進めるデジタル改善にすぎず、トランスフォーメーション(変革)と呼べるものではなかった。

「現在起きている変化は、江戸時代から明治時代に変わるほどのビジネストランスフォーメーション。だが日本の経営者は江戸時代のマインドセットから脱却できていない。ビジネスモデル、事業プロセスも含めて、企業そのものを再定義しなければならないのに、経営者にはその認識がない」

 だが、諦めるのはまだ早い。亦賀氏は「日本企業にもまだチャンスがある」と語る。

 日本企業が江戸時代から脱却し産業革命に適応するためには、三つのレイヤーで新たなマインドセットが必要だと亦賀氏は言う。「会社」「組織」「個人」だ。

 まず会社に必要なマインドセットは、「時代変化への対応と競争力の強化」「社会的規範の尊重(倫理、フェアネス、人間中心)」だ。次に組織に必要なマインドセットは、「人を大事に、元気に、活躍してもらう」ということだ。最後に個人に必要なマインドセットは、「好奇心を持って、健康的に、自分事としてより高みを目指す」ことである。

AIエージェントは業務効率化の「便利な道具」ではない。「産業革命」というレベルの社会の根本的な変化として捉えるべきガートナージャパン
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト
亦賀 忠明

 これらのマインドセットに共通するのは、「人間中心」の考え方だ。亦賀氏は最後にこう締めくくった。

「AIが進化し普及してきたことで、あらためて『人間とは何か』『会社とは何か』という問いに向き合うことができた。これまで人間が機械のようになってこなしてきた仕事をAIに任せることで、人間は『構想』や『意思決定』という本来の仕事に原点回帰することができる。AI導入によって、働く人が元気に活躍し、報酬を得られる仕組みを作ることが、真に強い企業の条件となるだろう」