効果の低い少子化対策より
社会保障改革を優先すべき

 ただ、少子化対策に過度な期待をするべきではありません。

 例えば、女性の高学歴化や社会進出が少子化の原因だからと言って、もう一度、女性を低学歴や専業主婦にとどめようとすることは不可能ですし、それは社会にとって望ましいことでもありません。また、独身者を不便にするために、様々な最新機器の利用を制限するわけにもいきません。少子化対策として実施できることは極めて限られているのです。

書影『入門 社会保障の経済学』(鈴木 亘、新世社)『入門 社会保障の経済学』(鈴木 亘、新世社)

 また、少子化対策に多額の公費をつぎ込むことも考えものです。そもそも、公費を使って少子化対策を行う根拠は、子どもが生まれると外部経済が発生するからです。その外部経済はどこから生じているのかと言えば、賦課方式の社会保障や、社会の随所に賦課方式的な仕組みがあるからです。しかし、少子化対策の費用対効果は極めて低いと考えられますから、そこに多くの公費や人的資源を割く価値は小さいと思われます。

 逆に、社会保障をはじめとする賦課方式の諸制度を、少子高齢化や人口減少に適応させる改革を行うために、貴重なリソースを振り向けるべきです。

 もちろん、結婚や出産を希望する人々が何らかの障害に阻まれている場合には、その障害を取り除くことが政策として必要ですが、少子化対策にできることはその程度です。少子化対策は、社会保障の維持可能性を確保するための「答え」ではなく、社会保障制度を改革することこそが、本当の「答え」なのです。