
かつて日本はGDP世界2位を誇る経済大国だった。しかし今や中国に抜かれ、ついにはドイツにも追い抜かれてしまった。少子高齢化で打つ手はないと思われがちだが、データを精査していくと意外な事実が浮かび上がる。いまの日本に決定的に足りないものとは?※本稿は、関山 健、鹿島平和研究所『「稼ぐ小国」の戦略 世界で沈む日本が成功した6つの国に学べること』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
地方創生と生産性を
両立するのは至難の技
経済学の実証分析から、人口密度と生産性は強い相関があることが分かっており、人口密度が低下すると、生産性の伸びも低下する。
このため、人口減少の中、生産性の伸びを維持・高めるためには、都市や地方の選択と集中を行い、その人口密度を維持・向上させることが重要だ。
だが、人口密度を高めると、出生率が低下するのではないかという懸念も多い。この象徴が東京ではないか。
すなわち、生産性を伸ばすため、人口密度を高める発想は理解できるが、そうすると、出生率が低下するという問題に直面するのではないか、という懸念が湧いてくるように思われる。
このような状況の中、2024年6月上旬、厚生労働省は、2023年の人口動態統計(概数)の公表を行い、同年の日本の合計特殊出生率(TFR)が過去最低の1.20に低下する可能性や、東京都のTFRが初めて1を切り、0.99になる可能性を明らかにした。
この話は大々的にニュースでも取り上げられ、テレビ等で、「日本のTFRが低いのは、出生率が低い東京に出産可能な女性が集まるためである」というコメントをする識者もいた。いわゆる「東京ブラックホール論」だが、そもそもこの懸念は事実なのか。