会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。
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企業にとって重要なのは「顧客の創造」
お客さまがいない会社は成り立ちません。お客さまが望む商品やサービスを提供することができず、さらには、お客さまから利益を得られない会社は、存続できないのです。
どんなに従業員が優秀でも、いくら頑張ってくれても、どうにもなりません。
ピーター・ドラッカー先生が「企業の存在意義は一義的には企業外部にある」と言っていますが、外部から認められない、つまり、お客さまがいない会社は成り立たないのです。
ドラッカー先生が、企業にとって大変重要なことは「顧客の創造」と言っているのとも共通します。
お客さまが望むものや、お客さまが今は気づいていないけれども、そのような商品やサービスがあれば喜ぶものを提供することにより「顧客の創造」が可能となるのです。
ドラッカー先生は、さらに、会社の存在意義(=「目的」)を「目標」に落とし込む際に、その第一番目は「マーケティングの目標」だと述べていることは、先に説明しました。
つまり、お客さまが望むQPSや商品、サービスを見出し、どう提供するかが、目標を決定する際の最優先事項だということです。
あくまでも「お客さま」という視点から考えたときには、お客さまが求めているものを提供することが第一に来るはずです。
「お金を追うな、仕事を追え」で、数字はそれができたかどうかの結果や評価でしかないわけです。それが「お客さま第一」ということで、マーケティングというよりは企業経営の根幹なのです。
「お客さま第一」の会社を作る
社長として大事なことは、いかに「お客さま志向」の会社を作れるか。
そのためには「良い仕事(お客さまが喜ぶこと、働く仲間が喜ぶこと、工夫)」が従業員や会社のためになり、本質的に社会貢献であることを十分に理解し、その根幹として「お客さま第一」がある、ということを十分に理解していなければなりません。
従業員にそこまでを理解させるのはなかなか難しいことですが、とにかく従業員には「良い仕事」に専念させることです。
お客さまは、お客さま志向の会社が好きなのです。従業員も「良い仕事」を通じて働きがいが高まり、その結果、自身のモチベーションや給与が上がる会社が好きなのです。
「お客さま第一」とは、お客さまに喜んでいただくことで、お客さまや社会が潤うとともに、それを提供する会社や従業員にも幸福をもたらすという、ビジネスの根幹であるということに気づかなければなりません。
本当の「お客さま第一」を知る
実は、「お客さま第一」をそこそこやっているのに、倒産する会社があるのです。
このことは、長年、経営コンサルタントとしての私の悩みでした。経営において、特に今のような供給過剰の時代においては、「お客さま第一」を実践しない限り会社はうまくいきません。
ところが、それをやっているのにうまくいかなくなる会社があります。そこそこまでは売り上げも伸びるのです。ただ、それが続きません。場合によっては倒産します。
その理由は、「お客さま第一」を儲けるための「手段」にしている会社と、「お客さま第一」そのものを「目的」としている会社の差なのです。
「お客さま第一」の話をどこかで聞きかじってきて、儲けるために、部下に対して「『お客さま第一』をやろう」と言ってやらせる。そうすると、ある程度はうまくいきます。
ただし、それは「お客さま第一」が儲ける手段になっているから、儲かってしまえば「そろそろいいか」となってしまうのです。「お客さま第一」とは、手間のかかるものだからです。
途中で伸びなくなる会社は、大抵はそれが原因でした。
そして、そのような経営者は儲けたお金を自分のためにどうやって使うかに、興味が変わってしまいます。お客さまに対しては、効率的に対応するようになり、お客さまはそれを嫌います。手を抜かれたくないのです。
けれど本当に良い会社は、「お客さま第一」が目的になっているのです。
お客さまのために、最良のQPSを常に提供し続けることを目的としていれば、終わりがありません。
経営者も「指揮官先頭」で「お客さま第一」を実践する。それが伸び続ける会社と、そうでない会社の差なのです。これは、先に述べた経営者の「欲」のレベルを高めるという話と本質は同じです。
「良い仕事」や「お客さま第一」が目的なのか、あるいは儲ける手段なのか。
経営者が「良い仕事」や「お客さま第一」を信念として持ち、それを指揮官先頭で実践しているのか。それが、伸び続ける良い会社と衰退する会社の一つの大きな分かれ目なのです。
(本稿は『[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。




