会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊『[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。
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クレームが発生することよりも
クレームのないことを恐れたほうがいい
前回に続いてクレームについての話をします。事業を行っている限りクレームは必ず発生します。クレームはないに越したことはありませんが、必ず発生します。
そして、やってはいけないことは「クレームゼロ運動」です。
クレームはお客さまが申し立てられるもので、自社内の不注意などで起こることを避ける「ミスゼロ」や「事故ゼロ」運動を行うのとは、本質が違うのです。
もちろん、「ミスゼロ」や「事故ゼロ」運動を行うことは正しいことですが、お客さまからの申し立てである「クレームゼロ」運動は行ってはいけません。それを行うと、クレームを隠したり、握りつぶす人が出てくるからです。
クレームをほったらかしにされると、当然お客さまは頭に来ますから二次クレームとなり、取り返しがつかなくなることもあります。
私は、大きなクレームを部下が隠していて、最大の取引先から取引を停止され、廃業に追い込まれた会社を知っています。
繰り返しますが、クレームは必ず発生するという前提で、先の項で述べたような対応方針をあらかじめ決めておき、その通りに動くということが大切です。
もし、ある会社でクレームが半年間なかったとすると、それは誰かが隠しているか、あるいは「適当に」お客さまをごまかしているかのどちらかです。
隠しているならまだ少しは罪悪感はあるでしょうが、クレームに対して適当にお客さまをごまかしているような社員がいるとすれば最悪です。本人は、うまく仕事をしているように思っているかもしれませんが、会社の評判や信用を大きく落としていることがあるのです。
もしあなたが社長やリーダーで、この半年ほどクレームを全く聞かないとすれば、社内の何かがおかしいのです。「クレームが発生することよりも、クレームのないことを恐れたほうがいい」のです。
クレームは「チャンス」
当社のお客さまで、クレーム対応を「チャンス対応」と呼んでいる会社があります。
クレームは即座に真摯に対応するのが大原則と先に説明しましたが、クレームに真摯に対応するとファンを作ることも多いからです。
その会社はサービス業で接客をすることが多いのですが、何かクレームがあれば即座に社長に連絡が来ると同時に、対応をするのです。
また、その会社では、クレームが発生したら「チャンス報告書」というものを社長あてに提出します。これは、そのチャンス(クレーム)にどう「対応」したかということと、さらには今後同じことを起こさないためにどう「対策」したかを報告するものです。
対応については、「その日のうちにご自宅に伺い、お花をお届けすると同時に謝罪した」などです。対策としては、同じミスを起こさないために「システム上でチェックできる仕組みを作った」などが報告されます。
当社でもクレームをいただいた際に、この会社にならい「対応・対策書」というものを、クレームを受けた人が1営業日以内に社員全員にメールで送るようにしています。
この際に、「対策」、つまり同じミスを二度と起こさないための方策を報告してもらっていますが、たまに「ダブルチェック」を誰かにしてもらうという対策が出てくることがあります。お金を扱うことやよほど重要なことならダブルチェックも仕方がありませんが、当社のような社員20名足らずの小さな会社で、いちいちダブルチェックをやっていたら、とても人が足りません。
そして、ダブルチェックというのは、自分がミスしてもだれかがカバーするという意識が生まれ、「責任の分散」が起こります。それではミスなどによりクレームを起こした本人の実力も上がりません。
対策は、「チェックリストを作り、必ず確認する」など、あくまでも自分の責任で二度と同じミスを起こさない内容でなければなりません。
その際に、「これまで以上に気をつける」などの精神論も役に立たないことは明らかです。
(本稿は『[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。




