いよいよ『怪談』の出番か
一度贅沢(ぜいたく)に慣れたらそんな簡単に貧乏に戻れないと思うが……。しかも、トキは東京に住みたいと言い出した張本人であり、都会暮らしを満喫しているはず。モデルのセツさんもそうだったようだ。でももうそういうリアリティは関係ない。ドラマはひたすら情緒に流れていく。
ヘブンはトキを抱きしめる。
「よかったのう 昔のわし」と遠くでカメラのピントの合わない司之介が言う。
「昔のわし?」と男同士のやりとりをわからないトキたち。そんなこともほっこりさせるきっかけになったのか、ヘブンは心を落ち着かせて椅子に座る。
「これでベストセイラが書けるのう」と司之介。
いや、でも、題材がまだ見つからない。
そこでトキが思いつく。
「次の本ですが、私、読めるの話 書いてくれませんか?」
「今まで、ようけ 本ありました。すばらしの本 ようけ。ずっと読みたかった。パパさんの本。だけん、学がない私でも、読めるの本、楽しいの本 書いてくれませんか」
きたきた、いよいよ『怪談』を書き出すきっかけだろう。いろんなことはさておき、『怪談』誕生を楽しむしかない。
それにしても、トキが夫の書いたものをまったく読んでいないというのが印象的。内容が難しい以前に英語だから読めないのだ。家族の誰もヘブンの仕事をわからないまま。まあ、それはどこの家でもあることだろう。でも、晩年、家族のために何かを残そうとする話は、あくまでもホームドラマである朝ドラにふさわしい。
そして、主人公(あるいはその近しい人)の歴史的偉業が最後の最後に出てくるのも朝ドラのひとつのパターンである。『あんぱん』も『アンパンマン』は終盤に誕生したし、『まんぷく』もインスタントラーメンは終盤に誕生した。『らんまん』も植物図鑑が終盤に……。
じらしにじらすのが策なのである。
さて、明日は『怪談』誕生か。









