その傾向はかなり根深いものです。たとえば、カナダのサイモン・フレーザー大学のロジャー・ビューラーらは、卒業論文に取り組んでいた学生37人を調べたところ、完成時期の最良見積もりは平均33.9日だったのに、実際には平均55.5日もかかっていました。
しかも「最悪の事態が起きたら」と悲観的に見積もらせても、予想は平均48.6日で実際にかかった時間より短かったのです。人はかなり慎重に考えたつもりでも、なお楽観的に見積もってしまいやすいわけです。
ウォータールー大学のイアン・ニューバイ=クラークらの研究も、同じ方向を示しています。人は課題の完了時期を予測するとき、うまくいくシナリオに注意を向けやすく、うまくいかない可能性を十分に織り込みません。だから、本人は「現実的に考えている」つもりでも、見積もりは甘くなりがちです。
ここで言いたいのは、過度に悲観的になれということではありません。気持ちは前向きなままでかまいません。けれども、計画を立てるときだけは慎重すぎるくらいでちょうどいいのです。楽観主義そのものが悪いのではなく、スケジュールまで楽観的に作ってしまうのが危ないのです。
この研究結果を仕事に当てはめてみましょう。
見積もりが甘い人は、着手も遅れます。着手が遅れれば、最後は時間との戦いになり、どうしても“やっつけ仕事”になりやすい。すると、質が落ち、ミスが増え、周囲にも迷惑がかかります。そういう状態を何度も繰り返していれば、「あの人は仕事が雑だ」「締め切りを守れない人だ」という評価になっていくのは当然でしょう。
常習的に仕事を先延ばしする人で、本当に仕事ができる人はいないでしょう。もし本当に仕事ができるなら、締め切りを「気合で何とかするもの」ではなく、「前もって潰しておくべきリスク」として扱っているはずだからです。






