数々の映画祭で日本人初の快挙を成し遂げてきた映画監督・脚本家の長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が間もなく発売となります。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛の同書から、抜粋・再構成して特別公開します。

脚本の教室Photo: Adobe Stock

「それっぽいもの」は誰にも評価されない

 22歳の頃、私は映画監督になりたかった。

 そのためにはまずPFF(ぴあフィルムフェスティバルという若手映画監督の登竜門的賞レース)で評価されたかった。売れたかった。

 自分が「最高だと思うか」なんかよりも、他者から評価されることを目指していた。

「なんとなく映画っぽい」「それっぽい」ものを作っていた。作るべきだと思っていた。

 当然、そんな映画はさっぱりなんの賞にも引っかからなかった。

 私は就職をして、スーツを着て、営業職についた。つまり、脚本家、映画監督になる夢をあきらめた。

全く予想していなかった世界一受賞

 それから十数年の時が経った。

 私は今、ハリウッドといくつものプロジェクトで脚本の仕事をしている。監督のオファーも来た。

 そして、ずっと憧れていたサンダンス映画祭で世界一を獲った(サンダンス映画祭とは、『パルプ・フィクション』のタランティーノ監督や『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督を輩出した映画祭である)。

 当時の私が聞いたら、喜ぶことも忘れて、想定外すぎる事態に「何が起こったの?」と口を半開きにするだろう。

 あの頃と、今とで、何が違うのか?

 それは、「自由にのびのび書いた」だけでした。

「それっぽさ」から遠く離れて書くということ。それだけでした。
 と、言ったらちょっと格好つけすぎかもしれないけれど、確かにそれだけなのです。

王道の脚本方式と
完全自己流の脚本方式をミックスして

 私は今現在、このような方法で脚本を書いています。

 特にオリジナル脚本の場合は、ゼロからアイデアを立ち上げたあとに、2つのメソッドを行ったり来たりしながらブラッシュアップし、完成稿まで書き上げます。

 それはそれはエキサイティングで楽しい作業です。

 私はただの映画ファンとして、最高だぜと思える映画が増えてほしいし、「それっぽい」ものを作ることが近道だと勘違いしていた学生時代の自分に、今のやり方をタイムマシンで戻って伝えたい。
 そう思っています。