サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛する同書について、長久氏へのインタビューも交えて深堀りします。(聞き手・文/飯室佐世子)
「書くこと」は最強のメンタルケア
上司からの理不尽な叱責、クライアントへの愛想笑い、あるいは過去の仕事での大きな失敗。
私たちは日々、ネガティブな感情を必死に押し殺し、社会性という鎧を着てビジネスの荒波を乗り越えています。
しかし、感情に蓋をし続けると、いつしか自己肯定感はすり減り、心が悲鳴を上げてしまう。
そんな現代のビジネスパーソンに向け、サンダンス映画祭でグランプリを受賞した映画監督・長久允氏は、「脚本を書くこと」を最強のメンタルケアとして推奨します。
映画監督になりたいわけじゃなくても
「映画監督になりたいわけでもないのに、脚本なんて書けない」と思うかもしれません。
しかし、長久氏は「脚本の公募とかに出して評価されることを目的とするとまた違う。素直に書いた方が自分のためになる」と語ります。
実は、誰にも見せない前提で、自分の中の怒りや悲しみを物語の形に書き殴る行為には、絶大な癒やしの効果があります。
長久允(以下、長久):脚本を書くことは、私にとってはスイカゲームより脳のリラックス効果が高いという説がありますよ(笑)。本で紹介している脚本のメソッドの中には、キャラクターの曼荼羅を書いたり、架空の土地のマップを書いたりする工程がありますが、これらができた時の包容感とか脳のヒーリング効果は本当に高いと思う。脚本はセラピー的な要素があるんです。
なぜ、脚本を書くことがセラピーになるのでしょうか。それは、「メタ認知」という心理的メカニズムが働くからです。
つらい過去を「エンタメ化」する魔法
私たちは、自分自身の失敗や悲しみの渦中にいるとき、主観的な視野に縛られ、ただただ苦しむことしかできません。
しかし、それを「物語」として客観的に書き出そうとした瞬間、視点がガラリと変わります。
著書の中で、長久氏はこのメカニズムを鮮やかに解説しています。
あの頃つらかった自分を、上方からもうひとりの自分が観察して書き記していく。そうやってある種のエンタメ化していくわけです。つらさは哀しみに、惨めさは滑稽さに。や、そこまで変換されなかったとしても、主観的な思い出から一歩抜け出すことができるでしょう。
--『あなたにしか書けないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』P.231より
心理療法のひとつに、過去の出来事を冷静に振り返り書き記す「日記療法」がありますが、脚本を書く行為はそれをさらに客観的(メタ的)にし、自分をエンタメ化していく荒療治に近いと言います。
過去のつらい体験や、誰にも言えない恥ずかしい感情。それを、「物語の主人公」という他者に背負わせて書き出してみる。すると、不思議なことに、その苦しみから解放される感覚を味わうことができるのです。
自分の「欠点」を肯定できたとき、自己肯定感は蘇る
さらに、多くの物語は「欠点のある主人公が、それを抱えながら課題を解決していく」という構造を持っています。
長久:物語にはキャラクターが必要で、その設定を書くときに、良くない癖や欠点も書いていくんですね。
あくまでフィクションではありつつも、自分と類似性のある欠点が湧き出てきたりするので、それを肯定していく物語になっていくと、自己肯定感にも繋がると思うんですよね。
自分の弱さや醜さを隠すのではなく、愛すべきキャラクターの個性として描き、彼らが前に進む姿を想像する。それはすなわち、自分自身の人生を肯定する作業に他なりません。
長久氏は著書の中で「天才はいない。個人的さだけがそこにある」と力強く断言しています。
誰もが羨むようなサクセスストーリーや、見栄えの良い「それっぽい」物語なんて書かなくていいのです。
社会性の服を着て無難にやり過ごすだけの毎日に疲れたら、今夜、一度スマホのメモを開いて、自分の中の怒りや悲しみを書き殴ってみてはどうでしょうか。
そのとっ散らかった感情のアウトプットこそが、社会の波にすり減ったあなたの「裸の自分」を取り戻し、心を救う最初の一歩になるはずです。
(本稿は、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の発売を記念したオリジナル記事です)
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佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん大絶賛!
それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

これからの「世界のスタンダード」を伝える
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……