Officeの中でAIを働かせようとするMicrosoft

 WindowsとOfficeスイートのエコシステムを持つMicrosoftは、AIエージェントを既存の業務ソフトの中に統合するという現実的な戦略を採用した。WordやExcel、PowerPointなどに組み込まれたCopilot(コパイロット)は、ドキュメント作成やデータ分析といった日常業務を半自動化しつつある。

 Microsoftの方向性は完全な自律AIというより、人間の判断を前提にした「協働型AI」であり、AIを企業のワークフローの中に自然に組み込むことを重視しているといえるだろう。

MicrosoftはCopilotをエージェント化し、「AIのためのUI」として人間がOfficeスイートなどを使ってAIと協働するためのシステムを構築しているMicrosoftはCopilotをエージェント化し、「AIのためのUI」として人間がOfficeスイートなどを使ってAIと協働するためのシステムを構築している 拡大画像表示

自律的にソフトウェア開発する「AIプログラマー」を育てたいApple

 こうした動きに対し、Apple Intelligenceを軸にAI戦略を強化しつつあるAppleは、開発者向けの「Agentic Coding」に力を入れ始めた。

 Agentic Codingとは、AIが単にコードの断片を提案するのではなく、ソフトウェア開発のプロセス全体に関与するという考え方である。AIはプログラムの目的を理解し、必要な機能を分解し、コードを書き、テストを行い、場合によっては修正まで行う。

 つまりAIが開発プロセスの中で自律的に行動する「コーディングエージェント」になるという発想で、AnthropicのClaudeとOpenAIのCodexを、自社のアプリ開発環境であるXcodeに統合することで、その機能を実現した。

Appleはアプリ開発者向けに、タスクの自律的な細分化からファイルの作成・編集、ビルドとテストの自律実行、エラーの自己修正までを自動で行えるAgentic Codingに力を入れているAppleはアプリ開発者向けに、タスクの自律的な細分化からファイルの作成・編集、ビルドとテストの自律実行、エラーの自己修正までを自動で行えるAgentic Codingに力を入れている 拡大画像表示

Genspark~AIが電話やダウンロードまで代行する

 さらに、AI検索サービスを提供するスタートアップのGensparkも、現在は各種エージェント機能の拡張に力を入れており、AIを単なる情報生成ツールから実務を支援するアシスタントへと進化させようとしている。

 すでに、ユーザーの代わりに電話をかけて問い合わせを行う「代理電話(通話代行エージェント)」機能や、ウェブ上のファイルを収集して整理する「代理ダウンロード(ダウンロードエージェント)」機能などが公開され、ユーザーが独自の用途に合わせて作り共有するための「カスタムエージェントストア」も提供されている。

Gensparkは、通話の代行をしてくれる「代理電話」や、ウェブ上のファイルの収集・整理を代行する「代理ダウンロード」といった機能別エージェントを提供しているGensparkは、通話の代行をしてくれる「代理電話」や、ウェブ上のファイルの収集・整理を代行する「代理ダウンロード」といった機能別エージェントを提供している 拡大画像表示

 このように見ていくと、AIエージェントという同じテーマであっても、各社の戦略は大きく異なっていることがわかる。OpenAIは自律型AIの研究を先導し、Googleはデジタル環境全体の操作インターフェースとしてAIを位置付け、AnthropicはAIの協働モデルを追求し、Microsoftは業務ソフトの中でAIを働かせる。

 そしてAppleは開発環境の中にエージェントを組み込み、Gensparkは実務タスクを直接代行するエージェント群を提供することで、新しいAIサービスの形を模索しているのである。