「ビジネスの効率性」が世界1位

 また、デンマークが強靭な経済力を築いてきたプロセスについても、知れば知るほど、本質的で示唆に富むものがある、と思うようになった。それは、この豊かさを、石油などの天然資源や、租税回避地のようなトリックに頼らず、生産性の高い経済を作るという、いわば“正攻法”によってもたらした点だ。

 デンマークという国が取った戦略を端的に表現するなら、自らを「資源は人しかない小国」であると規定した上で、男女問わず労働人口を最大限に活用しながら、グローバル経済を柔軟に生き抜く、というものだ。そうした考え方で、輸出志向型の、効率的な経済を作り上げている。

 人口にして世界の0.07%に過ぎない小国にもかかわらず、売上高で世界最大のおもちゃメーカー「レゴ」、糖尿病や肥満症の治療薬が世界的にヒットした製薬企業「ノボノルディスク」、グローバル物流の要となっているコンテナ海運企業「マースク」、世界の風力タービン市場でトップクラスのシェアを持つ「ベスタス」など、世界に名だたる企業を擁している。そんな企業の競争力の高さが、豊かさを支えているのである。

 また、この競争力ランキングでは、日本とデンマークが真逆とも言える評価を受けているのも、興味深い。

 デンマークは2022年と2023年が1位で、2024年以降も3位、4位と高評価を受け続けている。一方の日本は、1989年の開始当初から4年連続で1位だったものの、年を追うごとにランクが落ち、2025年は69カ国・地域のうち35位と、いまや下から数えた方が早い位置に低迷している。

 IMDのランキングの評価分野には、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つがある。

 このうち、デンマークが例年高い評価を受けるのが、「ビジネスの効率性」であり、6年続けて世界で1位。デンマークに対する評価では、税率の高さや生活費の高さが毎年ネックになっているのだが、そのマイナスを補ってもあまりある「ビジネスの効率性」があるわけだ。

 一方で、日本の足を引っ張っているのは何かと言うと、これが同じ「ビジネスの効率性」なのである。2025年は51位であり、6年連続で1位のデンマークとの違いが顕著なのだ。なかでも「生産性・効率性(デンマーク1位、日本56位)」「企業の経営手法(デンマーク2位、日本65位)」といった項目では、両国が対照的とも言える評価を受けている。

 だからこそ、デンマーク経済やデンマークのビジネス手法を知ることで、日本の課題が浮き彫りになり、多くのインスピレーションを受けられるのである。

※本記事は、『第3の時間──デンマークで学んだ、短く働き、人生を豊かに変える時間術』を抜粋、再編集したものです。