その上で、高橋成美さん(編集部注/りくりゅうペアの木原龍一選手の元パートナー)の功績というものを、今一度思い返されるべきだと思いました。彼女も中国での修行に始まり、ペアで日本初の偉業を幾度となく成し遂げてきたスケーターですし、何よりも木原龍一選手をシングルからペアの業界に引っ張ってきた張本人ですからね。

 やはり、りくりゅうの金メダルの源泉には高橋成美さんという歴史を拓いてきたスケーターがいるということに、もう一度フォーカスを当てられるべきだと思いますし、彼女がその偉業の瞬間に解説者をしていたということもまた、非常に感慨深いことだと、テレビ観戦しながら思っていました。本当におめでとうございます。

坂本花織が見せた
集大成の演技

――女子シングルについてはいかがでしょう?

 女子はショートからものすごくハイレベルな戦いでした。ショートの70点超えが9人と過去の五輪に比べて最多ですし、その70点超えしたスケーターの9名中6名が自己ベスト。

 ですから皆さん、120%の力を出して戦っています。女子は男子にも増して、ステップのレベルの取りこぼしさえも許されないシビアな戦いになっています。また総合得点を見てみても、200点超えを果たした選手が13人と、これまた五輪史上最多となっており、いかに女子シングルが白熱した戦いとなったかがわかります。

 結果的には、ショートとフリーともに大きなミスなくまとめたアリサ・リウが金メダルを手にしました。昨年の世界選手権とグランプリファイナルでもそうでしたが、彼女はここぞという時に絶対に外さない。どれほど重圧がかかろうが、それを意に介さず、自分の実力をすべて出しきることができます。この能力が抜群に秀でていることが、最大の勝因だと思います。

 一方で、惜しくも金メダルに届かなかった日本勢3選手にとっても、非常に意義のある五輪になったのではないかと思います。

 4位入賞の千葉百音選手は、イタリアの地で『ロミオとジュリエット』をテーマとしたフリーを成就させました。

 またシニアデビューのシーズンにもかかわらず、いきなり五輪に出場し銅メダルを獲得した中井亜美選手は、ショートとフリーでトリプルアクセルを完璧に決めました。五輪の舞台でそれを達成した選手は、2010年バンクーバー五輪の浅田真央さん、2022年北京五輪の樋口新葉さん、そして今大会同じく達成したアンバー・グレン選手に次ぐ4人目です。彼女は今大会での活躍をもって名実ともに世界屈指のトリプルアクセルジャンパーとなりました。

 そして銀メダルを獲得した坂本花織選手は、目標としていた金メダルにあと一歩及ばず、人一倍悔しい思いをしたかもしれません。しかし、彼女が集大成として創作したショート『Time to Say Goodbye』と、フリー『エディット・ピアフ・メドレー』を世界随一のスケーティング技術を駆使して、十二分に演じきりました。

 間違いなく坂本選手の今季のプログラムは、多くの人々によって語り継がれ、何度でも鑑賞されるべき傑作となったと言えるでしょう。

 文字通り、死力を尽くした選手の皆さんに、心からの敬意と賛辞をお贈りしたいと思います。