相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……
様々なブランドを大ヒットに導いてきたクリエイティブディレクター・水野学氏。
さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。
いったいどうしたら、多くの仕事を抱えながら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか?
水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。
Photo: Adobe Stock
それぞれの得意を活かす
私の会社、good design companyは、なぜたくさんの仕事を少人数かつ短時間でできるのか。チーム全体で行っている取り組みがあります。その一つが、「得意を伸ばす」マネジメントです。
もう10年ほどになりますが、それまではデザイナーそれぞれに、ジェネラルな能力を求めがちでした。
デザインもしっかりやってほしいし、発想力も大切だし、写真の基礎知識もあったほうがいいし、クライアントや印刷会社とのリレーション能力も一定水準までは引き上げてほしい。そんなふうに思ってしまっていました。
しかし、それをやめました。ある時期から、完全に諦めたのです。そうではなくて、それぞれの得意な部分を活かしてもらうことにしたのでした。
データの最終チェックを完璧にやってくれるなら、苦手なメール対応はやらなくていい。かたちを見る目が確かだから、みんなの仕事に構図やバランスの崩れがないか、全体を確認する役割を担ってほしい。発想力があるなら、それを活かす仕事に力を入れてほしい……。
それぞれの得意を活かし、それをいかに伸ばすか、というマネジメントに一気に変えたのでした。そうすることでスタッフ自身も負担が減り、マネジメントもしやすくなり、全体のスピードもアップして、より仕事がスムーズに進むようになったのです。
苦手な仕事をやることになると、とてもロスが大きいのです。そうであれば、得意な人に委ねたほうがいい。自分の得意にフォーカスしたほうがいい。
例えば、デザインのデータに強い、というスタッフがいます。データをつくるのが早いし、他のスタッフがつくったデータのミスを見つけるのも早い。だから、印刷会社に入稿する前には、彼のところでチェックしてもらいます。入稿データは社内で必ず二重チェックをしていますが、最後のチェック役を委ねているのです。
そうすると、「このデータ変だよ」という指摘が飛んできたりする。「このデータのリンク、うまく飛んでないよ」とか「細部まで見ると、こことここの線がうまく重なってないよ」とか、本当に細かくて、拡大してみないとわからないようなところまで見つけられる。ある意味、特殊技能だと思います。
ところが、対外的なやり取りは苦手だ、と言う。メールが打てない。ものすごく時間がかかる。それなら、メールは5分で他のスタッフにやってもらって、彼にはその能力を存分に発揮してもらうことにしたのでした。
絵を描くのが抜群に上手いスタッフは、デッサン力があるので、かたちを見る目がとても確か。他のスタッフが手がけているキャラクターデザインの途中経過が壁に貼ってあったら、ちらっと見て、「これ、頭の角度がちょっとおかしいね」なんて、鋭い指摘をしてくれる。自分の担当でなくても、造形の違和感にすぐ気づけるのです。
苦手なことは別のスタッフに任せて、その人にしかできない得意を活かしてもらう。これがとてもうまく機能したのです。
※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。







