スタートアップのバイブルとして名高い『起業のファイナンス』シリーズの最新刊として、『起業のコーポレート業務』が発売されました。オフィスの探し方や社会保険への加入、PR、反社対応、M&A・IPO準備など、総務・経理・労務・法務とEXITに関する全てをカバーする「スタートアップの実務大全」とも言える1冊で、スタートアップ以外の企業のコーポレート部門の人にも大いに役立つ内容となっています。
この連載では、主に同書の「コラム」を公開していきます。第2回は、スタートアップのランウェイ(現金が尽きるまでの残存月数)についてです。

燃えるキャッシュPhoto: Adobe Stock

ランウェイとして確保すべき期間は30か月が推奨されるように

 スタートアップにおけるランウェイ(現金が尽きるまでの残存月数)が13か月と20か月では、次回の資金調達のスケジュール感がまったく異なってくるため、ランウェイをどの程度の期間確保しておくべきかは、資金調達時に検討すべき論点の1つです。

 短すぎる:
 ・じっくり事業に取り組めない
 ・波に乗った時に攻めの投資ができない

 長すぎる:
 ・資金調達額が多くなり希薄化率が高くなる
 ・よい意味での緊張感が低下する

 といったことを勘案しつつ、予算・事業計画とセットで検討してください。

 2022年以降、資金調達環境は軟調で、資金調達期間が長期化する傾向があります。2025年における期間の中央値は、

 ・創業→シード:21か月
 ・シード→シリーズA:27か月
 ・シリーズA→B:19か月

 となっており、かつては、ランウェイとして確保すべき期間は「18~24か月(1年半から2年)を推奨」と言われていましたが、30か月が推奨されるようになりつつあります。

資金繰表

 バーンレート・ランウェイの計算に加え、資金繰表の作成も重要です。ランウェイが半年を切ってくると、資金調達活動をしていても着金タイミングとの戦いになるため、いざという時に備えて作成しておくのを推奨します。

 資金繰表は、実際の銀行口座の入出金履歴を見ながら、日次ベースで作成します。過去の入出金履歴を見ながら、何日に、どういう項目で入出金があったのかを把握した上で、当月や来月にそれらの項目でどれくらいの入出金がありそうかを請求書などから拾っていきます。

 次の図表の例ですと、5月15日分の支払いまではなんとかなりますが、5月20日分の給与支払い(キャッシュアウト)にて口座の残高が足りなくなります(=キャッシュショート)。

資金繰表

 資金調達中で最終段階なのであれば、出資先に依頼して着金タイミングを5月20日より前にしてもらうか、それが難しければ既存株主や取引銀行にブリッジファイナンス(つなぎ資金の融通)を依頼するなど、前もって手当を検討する必要があります。

 ちなみに、キャッシュアウト/ショートはよく誤用されています。他のファイナンスカタカナ用語と併せて別のコラムで正しい使い方について説明します。