あまりにあっけない

 雪が舞う墓地。

 大きなヘブンは小さな瓶におさまっていた。無音のあとの最初の音はこの瓶のかすかな音だった。

 葬式も済んで、この日は納骨に来たようだ。ヘブンが好んださみしい墓地に。

 そこには丈(杉田雷麟)、サワ(円井わん)と庄田(濱正悟)もいる。

 庄田が携えてきた山高帽は形見分けした錦織(吉沢亮)のもので、錦織も一緒にお墓参りということだ。天国でヘブンと錦織はまた一緒に本作りをしているだろうか。

 トキは穏やかそうに見える。

 でも、サワとふたりきりになり「取り乱した?」と聞かれると、せきを切ったように、取り乱す。

「最後があまりに静かであっけなくて。取り乱す暇もなかったいうか、取り乱せんかったいうか……」

「思ひ出の記」にも「あまりあっけない死に方だと今に思われます」と書いてある。

 ほんとうにあっけなく、サクラの花があっという間に散ってしまうみたいにふっと消えてしまったヘブン(村橋演出でだいぶあっけなくなくわりとたっぷり叙情的に描いてあったが)。

 トキは長いこと看病して覚悟ができたら諦めもついたと思うと言うが、長く闘病して看病するしんどさが互いになかったことはよかったともいえるのではないだろうか。

 トキにしてみればずっとそばにいた人が、あまりに突然消えてしまって、呆然(ぼうぜん)自失だった。

 サワによって固まっていた心が動き、涙があふれ出た。泣くなとヘブンに言われていたけれど、やっぱり泣いてしまうのだ。

 視聴者も同じ心境であろう。15分中の前半でヘブンが亡くなってしまい、そのあと、まだドラマが続く。心のざわつきが止まらない。

 通常だと亡くなったところで「つづく」、あるいは、トキがようやく泣いたところで「つづく」になりそうだが、この回はまだ話が続くのだ。ただ、キャストクレジットはこの場面に流れるので、ここはちょっとしたエンディングのような扱いであろう。

 勘右衛門(小日向文世)とヘブンの遺影が並んでいるところに、女性が訪ねてくる。

 ヘブンの訃報(ふほう)を聞いて飛んできた(船だけど)イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)だった。

 ここへ来て、イライザ。あと3回しかないのに、イライザは何しにニホンへ?

 芸達者なトミー・バストウ(ヘブン)がいないと間がもつのか心配なところ、シャーロット・ケイト・フォックスが代わりを務めるか。偏見かもしれないが、海外の俳優は芝居の幹が太く、それに比べて日本の俳優の芝居はひょろりと細く感じるのだ。

 見事にヘブンを演じきったトミー・バストウが、小泉八雲のお墓にお参りした。

 そのときのコメントはこちら。

「あらためて小泉八雲さんのお墓にお参りをして、圧倒されるような気持ちになりました。
 感情があふれ、とても強く心を揺さぶられ……そして同時に雨清水八雲(レフカダ・ヘブン)役を演じる機会をいただけたことに感謝しました。
 お墓の前に立った時、芸術の持つ“時を超える力”のようなものを実感しました。
 小泉八雲さんは、100年以上前に日本に来て、今もなお人々に記憶され、たたえられ続けています。そのことを思うと、自分が彼の物語の一部になれたことが、とても恐れ多く、そして感謝の気持ちでいっぱいです。
 小泉八雲さんとセツさんの物語は、この先も何百年と語り継がれていくのだと思います」

NHKの常識を破った「30秒の無音」、高石あかりの“決意”を揺さぶった異例の演出〈ばけばけ第122回〉
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