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米中が火花を散らす「AI(人工知能)覇権」を巡る産業戦争において、要となるのが半導体サプライチェーンだ。米エヌビディア、台湾TSMC、中国のファーウェイなどが一般にも広く知られるが、彼ら半導体メーカーだけで産業は成り立たない。半導体を製造する装置があってこそだ。世界最大の半導体製造装置メーカーであるオランダのASMLは、最先端の半導体を製造するのに欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置で市場を独占。中小企業から巨大企業に変貌を遂げ、今や半導体産業の中核を担う。このASMLの舞台裏を描くノンフィクションの和訳本『FOCUS ASMLの流儀――地球上で最も複雑な装置をめぐる勢力争いの裏側』(マルク・ハインク著、化学工業日報社)の中から、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCとASMLの関係を描いた「第24章 モリスの仲間」を3回にわたって特別公開する。第2回は、成功したTSMCとASMLが共に守る「鉄の掟」の正体に迫る。
TSMCの担当者が怒りのあまり
Teams会議を突然終了
ASMLのフィールドエンジニアは、TSMCの工場最適化を支援している。同時に、フェルトホーフェン(編集部注:ASMLの本社がある拠点)の同僚に協力を仰ぐのも仕事の一つだ。両社の議論はしばしば白熱し、激しい対立が生じることもある。フェルトホーフェンの設計者たちは、TSMCがEUV装置を適切に使用していない、あるいはチップ工場にある他の装置が汚染を引き起こしているのではないかと示唆することがよくあった。怒りのあまりTSMCの担当者がTeams会議を突然終了させると、現地のASMLチームは事態の収拾は自分たちにかかっていると観念した。
「TSMCは、協力する姿勢とプレッシャーのかけ方のバランスが取れています」とフリッツ・ファン・ハウト(編集部注:ASMLの経営執行役員も務めた技術者)は言う。技術的な課題の解決に関しては、両社は迅速に連携して動いた。文化的な相性も重要だ。一般的に台湾人は英語を話すことに慣れており、ASMLと同じ「アウトソーシング精神」を持っている。つまり、もし他の誰かがより上手くできるなら、その人に任せましょうということだ。
TSMCの企業文化はASMLに比べて階級主義的だが、韓国ほど軍隊的ではない。研究部門は特に業務負担が大きい。自分たちの働きが将来的にはASMLを通して競合他社に利益をもたらすと分かってはいたが、自分たちが会社を支えているという自負をスタッフたちは持っていた。







