AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本#9Photo:Bloomberg/gettyimages

米巨大テックを中心とするAI(人工知能)インフラへの巨額投資に連動し、データセンター向けのAI半導体の市場は加速度的に伸びていく見通しだ。市場の8割のシェアを握る米エヌビディア「1強」体制は、今後どのように変容していくのか。米巨大テックは、米半導体大手ブロードコムの支援を受けながら独自の半導体を次々に投入。米オープンAIも独自半導体を開発・量産する方針を表明し、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計アームも水面下で開発に着手しているもようだ。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#9では、“エヌビディア包囲網”が形成されつつあるAI半導体業界の「新たな構図」を図解で分かりやすく解説する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

エヌビディア1強に「風穴」
グーグル、アマゾン、マイクロソフトが自社投入

 2030年に見込まれていた世界半導体市場の「1兆ドル」の達成は、大幅に前倒しになりそうだ。

 主要な半導体メーカーの予測値を基に作成する世界半導体市場統計(WSTS)が発表した26年の世界市場は、前年比26.3%増の9755億ドルに達する見通しだ。24年の19.7%増、25年(予測)の22.5%増を上回る高成長が続いており、1兆ドルの大台は、もはや視界に入った。

 AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)も、データセンター向けのAI半導体を対象にした市場だけでも30年に1兆ドルを超える規模になるとの見方を示す。

 この急拡大をけん引するのは、米巨大テックのAIインフラ投資だ。グーグル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなどのハイパースケーラーだけではなく、米オープンAIも参戦。数千億ドル規模の投資計画が相次いで打ち出されている(詳細は本特集の#7『【大図解】米オープンAI・ソフトバンク連合による“210兆円大博打”の懸念が一目瞭然!グーグル、マイクロソフト、アマゾンの主要4陣営「AI投資バブル」の正体』参照)。

 こうした米巨大テックの投資資金の受け皿となってきたのが、AI半導体市場で8割のシェアを握る米エヌビディアだ。

 だが、このエヌビディア「1強」の構図に変調の兆しが表れ始めた。転機となったのが、25年11月にグーグルが公開したAIモデル「Gemini(ジェミニ)3」だ。グーグルは、ジェミニ3の学習に独自開発したAI半導体「TPU」を使った。高価なエヌビディアのGPUへの依存を減らしてAIインフラ投資を抑制する狙いで、独自半導体の活用を本格化させてエヌビディア以外の選択肢を探り始めている。

 さらにアマゾンは25年12月に最新の独自半導体「トレーニアム4」の開発計画を発表。前世代のトレーニアム3は、米AI新興企業のアンソロピックなど他社への外販も開始しており、内製にとどまらない展開を見せる。マイクロソフトも26年1月、同社として第2世代となる独自半導体の「Maia(マイア)200」を発表した。同社のクラウド基盤「アジュール」での活用を通じてエヌビディア依存の低減を狙う。

 エヌビディア1強を揺さぶる対抗勢力が続々と動きを見せる今、半導体製造装置メーカーや半導体材料メーカーをはじめとする日本企業にとって、どこに商機が生まれるのか。

 次ページでは、AI半導体市場の構造が一目で分かる大図解を示し、産業構造の大変革に迫る。